本研究では,投動作における運動連鎖が発生する要因を明らかにすることを目的とした.投動作のコンピュータシミュレーションを用いて,様々な条件での最適投動作を推定し,運動連鎖の現象がみられるのかを検討した.さらにシミュレーション条件に類似した投動作を実験的に分析し,シミュレーション結果の妥当性を検証した.その結果,投動作における運動連鎖を決定する要因は,ボールや上肢の慣性の分布よりも,上肢関節の自由度である可能性が高いと考えられた.たとえば肘関節は内外反軸が拘束されているため,受動トルクを有効利用するように肩関節水平内転は肩関節内旋よりも早いタイミングで生じ,運動連鎖が存在すると考えられる.
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