研究課題/領域番号 |
23500720
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
鍋倉 賢治 筑波大学, 体育系, 准教授 (60237584)
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研究分担者 |
榎本 靖士 筑波大学, 体育系, 准教授 (90379058)
門野 洋介 筑波大学, 体育系, 研究員 (20601016)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 中距離走 / 長距離走 / 最大酸素摂取量 / 無酸素性エネルギー代謝 / 有酸素性エネルギー代謝 / 乳酸性代謝閾値 / MAOD / 走の経済性 |
研究概要 |
長距離走では、最大酸素摂取量、乳酸性代謝閾値および走の経済性の3要因によってパフォーマンスの7割程度を説明できると言われている。しかしながら、長距離走には10分未満で終了するトラック競技から、マラソンのように数時間に及ぶロード競技まで多岐にわたる。5000m走(約15分)の場合、相対運動強度は最大酸素摂取量の100%近くに達し、レース中盤の速度変化やラストスパートを考慮すると、有酸素性エネルギーだけではなく、無酸素性エネルギー代謝の貢献も無視できない。さらに、800m走などの中距離種目になれば、無酸素性エネルギー供給系の評価を抜きにパフォーマンスを説明することはできない。そこで本研究では、中・長距離走全般にわたりレース中の生理応答を明らかにし、さらに縦断的な体力測定を通し、レースや対象者の能力に応じたトレーニング課題、効果的なトレーニング法について提案することを目的とし、平成23年度は1)800m走中のエネルギー代謝とパフォーマンスの関係の検討、2)中・長距離走者の縦断的体力測定データの集積に着手した。1)においては、中長距離走者11名を対象にトラックでの800 m走中のエネルギー代謝を明らかにし、レースパターン、体力特性との関係を検討した。その結果、800m走の平均走速度は最大酸素摂取量の120%にも達し、無酸素性エネルギー供給量が全エネルギー需要量の30%を占めた。また、前半の走速度が速い走者は無酸素性能力が高く、かつ無酸素性エネルギー供給に依存する割合が高かった。一方、後半型の走者は有酸素性能力が高く、かつ有酸素性エネルギー供給に依存する割合が高かった。これらの結果は、体力の評価がレースパターンを修正するための手段としても有効であることや、目標とするレースパターンを遂行するためのトレーニング課題を提示できる可能性があることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実際のフィールドにおいてエネルギー代謝を評価するために、測定器具(携帯型代謝分析器)を用いた方法論を確立できた。その方法を用いた800m走のレース分析について、学会(第24回ランニング学会:2012年3月)発表を行なし、優秀発表賞の表彰を受けた。また、縦断的体力評価についても着手することができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は大別すると、次の2つの課題を検討して行く予定である。1)レース中のエネルギー代謝を中心とした生理応答を明らかにすること、2)中長距離走トレーニング方法の妥当性を検討すること、である。1)については、中長距離走全体を包括的に評価するために、800m走よりも距離の長い3000m(5000m)走レース中のエネルギー代謝を明らかにすることや、超長距離走であるマラソンを視野に入れたレース(実験では30km走など)中のエネルギー代謝を明らかにしたい。また、2)においては、中長距離ランナーの縦断的体力測定を推し進めることによって、トレーニング、体力、パフォーマンスの関係を検討すること、トレーニング手段の評価として、早朝練習中のエネルギー代謝などに焦点を合わせた研究を推進すること、などを研究課題として予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究遂行に必要な消耗品、トレーニング法などの情報収集、学会発表のための旅費、実験補助者への謝金等に使用する予定である。
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