研究課題/領域番号 |
23500721
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
澤江 幸則 筑波大学, 体育系, 准教授 (20364846)
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研究分担者 |
齊藤 まゆみ 筑波大学, 体育系, 准教授 (00223339)
柄田 毅 文京学院大学, 人間学部, 准教授 (10383308)
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キーワード | 自閉症 / 対人調整 / 協調運動 / 多様性運動課題 / 動作即時模倣課題 |
研究概要 |
本研究の目的である自閉症児の対人調整を目的とした運動プログラムの開発の基礎的資料となる自閉症児の運動面と対人面の「調整」的関連性を明らかにするために、本年度は、4歳から13歳までの合計15名の自閉症スペクトラム障害児に対して、アセスメントを行い、そのアセスメント結果をもとに、個別の対人的運動調整課題を試行的に策定し実施した。 その課題前後の評価として、昨年度までに検討されたMovment-ABC2と動作模倣課題、即時運動調査課題、日常生活動作課題を実施した。そのうち、動作模倣課題では、対象児童の動作を録画し、約1/60秒コマごとに動作分解し、その反応速度を分析した。また、即時運動調査では、対象児の跳躍動作の高さを指標にし、動画記録をもとに高さを算出した。また対象児によっては、その認知的特性が(介在要因)として考えられることが予想されたため、DN-CASやWISC、または田中ビネーなどを実施した。加えて、社会性認知特性を明らかにするためにT0M検査を行った対象児もいた。 個別の対人的運動調整課題内容は、研究者間の協議をもとに策定し、主に動作即時模倣課題やキャッチボールなどの対人調整を必要とする課題に加え、運動調整を促すために多様性運動課題(距離、移動、ボール種類などを変えた課題)を実施した。 実施の結果、対人的運動調整課題の直接的影響を明らかにするまでには至っていない。今後、対象児に対する継続的課題実施が必要である。また多様性運動課題を実施した対象児において、国際的に研究や臨床で使用されている協調運動テストであるMovement-ABCによる評価結果において、想定されたものと異なる結果がみられた。それは運動調整の個人内メカニズムにとっては貴重な知見であったため、その検討を行う必要性が生じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度予定していた実践的調査は計画通り実施するに至った。そして当面予定したサイズまでには至っていないが、示唆に富んだマルチケースを着実に得てきた。しかしその成果を論文として報告できていない点で「おおむね」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の調査において、運動調整の個人内メカニズムにおいてしなければならない課題が生じたため、まずそれについての研究調査を行うこととした。その結果も加えて、現在までの調査の結果から考案されたキャッチボールをベースとした介入活動(playing catch based intervention)の妥当性を検討し、対人調整運動プログラムとして作成する。 最後に調査結果全体に対する考察内容を「エビデンス解説」に上記の対人調整運動プログラムに付記する。これらの内容を冊子にし、学校教育関係、療育・障害児保育関係機関等に配布し、他の研究者や指導者と意見交換できる環境を整える。
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次年度の研究費の使用計画 |
運動調整の個人内メカニズムのためのデータ収集および、また対人調整運動プログラムの検証作業のため、1)実地調査における調査協力者に対する交通費と、2)調査結果をパソコンに入力し、資料整理するための人件費、3)それに係る用具等の購入に加え、入力作業に必要される記憶媒体等の購入が必要である。加えて、それら集積された情報をもとに分析するために必要とされる4)研究資料、および5)研究者同士による討論会にかかる交通費等、そして結果を公表するために必要となる6)学会への発表と参加費、加えて運動プログラムを公表するための冊子作成代に充てたいと計画している。 特に今年度の研究において、さらに検討が必要とされた研究課題が生じたことから、1)の実地調査や3)の実地調査に係る用具等にかける費用がかさむと考え、本年度予算の一部を繰り越すこととした。
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