研究課題/領域番号 |
23500726
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
塩野谷 明 長岡技術科学大学, 工学部, 准教授 (50187332)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | スキー実滑走 / 模擬振動 / 発生源シミュレータ / スキー滑走機構 |
研究概要 |
平成23年度は、スキー実滑走時模擬振動発生源シミュレータの開発を行なった。シミュレータはスキー滑走面を表面とし、スキートップ部とテール部に加速度センサー(PIEZOTRONICS社製352B型)を設置、両端からの加速度信号を検出、A/D変換した後コンピュータに取り込み、運動解析システム(東陽テクニカ製Waap-Win)で周波数解析等を行うシステムとした。スキーは角度調整を可能とし、スキー・スキーヤー系を想定した雪塊ブロック(重錘によって質量を変化させる)がスキー滑走面上を滑走するものとした。雪塊ブロックには滑車を装着し、ワイヤーを介してワイヤーの一端をスキートップ部外に固定したデジタルフォースゲージ(イマダ社製DP-50X)に装着、もう一端を巻き取り用ドラムに装着した。本機構は、筆者らが開発したエルゴメータ・アタッチメントからの技術移転である。この機構によって雪塊は動滑車となり、雪塊が滑走中連続的に検出される推進力(フォースゲージ出力)がコンピュータに取り込まれ、スキーの角度を考慮したsin成分とcos成分から動摩擦係数が算出される。スキーは当初、工業用電動式汎用性振動試験器(Mitutoyo社製MES661)を用いて加振する予定であったが、予算の超過を余儀なくされたために予定を変更、ANEST IWATA社製の大型コンプレッサーにより空気タンク内圧力を上昇させ、EXEN社製のボールバイブレータを回転させることで振動を発生させるシステムとした。あわせて雪塊滑走の様子は准高速度カメラ(CASIO社製EXILIM分解能120fps)を用いて撮影され、画像解析システム(OPT-8PZ)によって速度、加速度等の算出が可能なシステムとして構築した。このように当該年度はシミュレータの開発を中心に研究を実施、一部低温実験室を用いたフィールド実験までを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、スキー実滑走時模擬振動発生源シミュレータの開発を行なった。このシミュレータの開発の基準としては、申請書にあげたように(1)スキー・スキーヤー系を想定した雪塊のスムーズな滑走(雪塊が滑走面上ではねたりしないこと等)(2)加速度センサーの信号からスキーの固有振動および入力された振動周波数の同定(3)デジタルフォースゲージ出力からの雪塊の推進力、雪面とスキー滑走面間に発生する動摩擦係数の同定(4)画像解析からの滑走速度、加速度等の算出の4つであった。(1)については、既に予備実験の段階で雪塊のスムーズな滑走を画像や加速度波形から確認しており、特に加速度波形からは振幅強度に大きな変化等が検出されていないことから、本システムにおける雪塊は、実験目的を達成するに十分スムーズな滑走をしていると考えている。(2)についても、予備実験の段階で振動周波数の同定が可能であることを確認していたが、実際の低温実験室でのフィールド実験において雪の状態(例えば、粗目雪や氷化した雪等といった状態)にまで対応できなかったこと、また低温実験環境下(マイナス5度)でデータの記録ができなかった等が発生しているため、低温環境でのシステムの耐性等が課題として残った。(3)については、フィールド実験においてスキー滑走面と雪の動摩擦係数を算出した結果、0.07~0.09とこれまで報告される数値にほぼ近いものが得られたことから、当初の開発基準を十分に満たしていると考える。(4)については、計測・解析システムは構築したが、低温実験室環境の照度不足が発見されたため、急遽ビデオライティングシステムの導入を図った。以上より、研究は概ね予定通り進捗しているものと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度(研究2年目)以降については、当初の予定どおり以下の内容を考えている。1)シミュレータを用いたスキー板の振動周波数強度と滑走速度の関係の定量的評価および振動試験器からの入力振動に対する滑走動態の定量的評価2)スキー実滑走実験によるスキー板の振動と滑走速度の関係の確認およびシミュレータ結果との比較検討と新しいスキー滑走メカニズムの提案である。1)においては、前年度開発したシミュレータを用い、ボールバイブレータより入力される1次から5次までのスキー固有振動周波数に近い振動、ならびにスキー実滑走では発生しない500Hz以上の振動をスキー板に暴露し、それぞれの加振条件における優位な振動周波数と雪塊の滑走速度、加速度、雪面と滑走面間の動摩擦係数との関係を検討する。すなわち、10Hz程度(あるいはそれ以下)の低周波の振動から500Hzといったスキー実滑走では発生しない高周波の振動をスキー板に暴露した際の、上記物理的パラメータについて比較検討することで、スキー滑走のメカニズム解明のための基礎的資料を得ようとするものである。実験に際しては、長岡工業高等専門学校の低温実験室を使用し、気温、雪温、湿度等の気象環境を一定条件とすることで実験結果の再現性をより高いものとしていく。2)においては、シミュレータを用いた実験結果がスキー実滑走時に適用されるか否かを確認するために以下の実験を行なう。実験は当初スキー板上に振動吸収板ダンパーを装着し、1次から5次までの固有振動をそれぞれ独立して抑えることを想定したが、ボールバイブレータを応用し、固有振動を励起させたときのスキー滑走速度と振動周波数の関係を検討していくことを考えている。これら研究の進捗にあわせて具体的な課題として、シミュレータの改良特に低温環境下に対応するための対策を行っていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度の予算執行に係る大きな変更は、シミュレータにおいて当初スキーは工業用電動式汎用性振動試験器(Mitutoyo社製MES661)を用いて加振する予定であったが、予算の超過を余儀なくされたために予定を変更、ANEST IWATA社製の大型コンプレッサーにより空気タンク内圧力を上昇させ、EXEN社製のボールバイブレータを回転させることで振動を発生させるシステムを採用した。結果として、次年度以降の予算に余裕ができたものの、一方で低温環境下における実験対策の必要性すなわちシステムの改良や更新の必要性等余儀なくされている点も多々存在する。そこで、平成24年度は以下の研究費使用を主に予定している。(1)加速度センサー(PIEZOTRONICS社製352B型)、デジタルフォースゲージ(イマダ社製DP-50X)を含めた運動解析システム(東陽テクニカ製Waap-Win)の更新(平成23年度は既存のものを使用):100万円 (2)高速度カメラARGOTXGOまたは同等品4h240fps同期可能ならびに高速度カメラ用運動解析プログラム開発費・OTL-8DZ:120万円。以上である。
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