研究課題/領域番号 |
23500726
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
塩野谷 明 長岡技術科学大学, 工学部, 准教授 (50187332)
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キーワード | スキー実滑走 / 模擬振動 / 発生源シミュレータ / スキー滑走機構 |
研究概要 |
平成24年度は、前年度基盤開発したスキー実滑走時模擬振動発生源シミュレータ(スキー滑走面を雪面と仮定、スキーヤーを想定した雪塊が仮定雪面を滑走する際の滑走速度、摩擦力を計測し、動摩擦係数を算出するとともに、人工的に板を加振振動させ、振動周波数が滑走に与える影響を検討するシステム)を用い、低温環境下でいくつかの条件を付加した雪塊滑走実験を行った。あわせて、構築したシステムから得られるデータの精度・再現性について、算出した動摩擦係数を指標に再考した。実験条件としては、①スキー実滑走環境を想定した気温の違い、②スキーヤーの体重を想定した雪塊質量の違い、③スキー滑走斜面を想定したスキー角の違い、④振動周波数の違いとして、滑走速度、動摩擦係数について定量的に検討した。これらの実験の結果、スキーの滑走製に影響すると考えられている200[Hz]前後の振動周波数をスキーに励起した場合と励起しない場合との比較において、いかなる物理条件下(①~④)であっても雪塊の滑走速度が上昇することを確認した。さらに、スキー実滑走では発生しない(周波数強度が小さい)500[Hz]前後の高周波の振動を励起した場合、200[Hz]前後の振動周波数を励起した場合よりも滑走速度が上昇することを確認した。加えて、これらの実験をとおして計測された動摩擦力より算出した動摩擦係数は、0.018~0.065の範囲となり、これまで報告される数値とほぼ等しい数値であったため、システムの精度および得られる数値の精度についても、その保証が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要で述べたとおり、平成24年度は前年度基盤開発したスキー実滑走時模擬振動発生源シミュレータを用い、低温環境下でいくつかの条件を付加した実験を行った。あわせて、構築したシステムから得られるデータの精度・再現性について、算出した動摩擦係数を指標に再考した。実験条件としては、①スキー実滑走環境を想定した気温の違い、②スキーヤーの体重を想定した雪塊質量の違い、③スキー滑走斜面を想定したスキー角の違い、④振動周波数の違いとし、それぞれの条件下での滑走速度、動摩擦係数について定量的に検討した。①気温差による違いでは、0℃と-5℃の比較で0℃において滑走速度が高いことを確認した。-5℃以下の場合はさらに速度に差がみられることから、氷点下以下では温度の低下と滑走速度の低下が比例関係にあることが予想された。②雪塊質量の違いでは、1kg、2kg、3kgと質量が重くなるほど滑走速度が高くなる傾向が確認された。また、③スキー(斜面)角の違いについては7°~15°で検討しているが、結果が必然的なためここでは言及しない。④振動周波数の違いについては、①~③のいかなる条件下であっても、スキーの滑走性に影響すると考えられている200[Hz]前後の振動周波数をスキーに励起した場合、励起しない場合よりも雪塊の滑走速度が上昇することを確認した。加えて、スキー実滑走では発生しない(周波数強度が小さい)500[Hz]前後の高周波の振動を励起した場合、200[Hz]前後の振動周波数を励起した場合よりもさらに滑走速度が上昇することを確認した。このように本研究の目的である高次の周波数をスキー板に励起した場合滑走性が高まること、さらに実際のスキー滑走では発生しない高次の周波数はスキー滑走性をさらに高めることが期待される結果が導かれ、当該年度は今後の研究に重要となる方向性が導き出されている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度については、後述するとおり予算的に余裕が出たため当初の予定に加え、新しい内容を追加するとともに、次の研究への基盤となる内容を行っていく。具体的には、スキー滑走メカニズムの提案までを目指し、以下の内容について実施する。 1)2台のコンプレッサーを同時使用し、それぞれの出力を最大値とすることでボールバイブレータによって発生する振動波形に位相差を作ることで500[Hz]から1000[Hz]以上といったスキー滑走時にはみられない振動を励起した場合のスキー滑走性について、滑走速度、動摩擦係数の観点から検討していく。これは後述するスキーの実滑走において、より滑走性を高めるためのコンセプト提案に結びつくことが考えられる。 2)前年度の実施状況報告書では、本研究申請時に計画していた最終年度スキー実滑走時への応用で振動吸収ダンパーを装着し、1次~5次までの振動を独自に抑える方法を一旦見直し、後述する方法を採用するとしたが、再度この方法についても粘性ダンパーを用いることで実施する。なお、これに関しては既に、最終年度4月に2回の雪上実験を実施している。また、昨年度報告書で新たに提案したボールバイブレータを使用して、スキー板に高次の振動を励起させてのスキー実滑走実験についても実施していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究最終年度を迎えるにあたり、初年度、開発したシミュレータの振動発生源を工業用電動式汎用性振動試験器から大型コンプレッサーによって金属製ボールバイブレータを回転させ振動を発生させる方法に変えたこと、加えて2年度、予定していた高速度カメラおよび解析プログラムの開発に際して、昨年10月に助成された別財源(住友健康財団助成:当該研究の応用的研究で本研究課題の内容とは別のものである)を使ったことから、前述のように予算的に余裕が生まれたため、今後の研究推進の方策にあげたスキー実滑走実験を念頭にした研究費使用を行っていく。具体的には、複数の粘性ダンパーおよび付属品の購入(50万円)、実滑走の物理条件特に気温、雪質等に幅をもたせるため北海道等での実験(15万円)、および2年度に予定していた低温環境下実験に対応させるためのシステムの保守・整備(加速度センサー:PIEZOTRONICS製352B、デジタルフォースゲージ:イマダ社製DP-50X、運動解析システム:東陽テクニカ製Waap-Win。100万円)を予定している。あわせて、9月に香港で行われるATCST2013において発表を予定しているため、その旅費としても一部使用する。以上である。
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