研究概要 |
本研究は,日本とケニアのジュニアと成人の長距離選手を対象に,下肢における筋と腱両組織の形態,ならびに生理・力学特性を計測 し,その発達過程の人種差と競技パフォーマンスの変化との関連について検討することを目的としている.本年度においては,特に以 下の2点について研究を遂行した. 1) ケニアの陸上競技コーチの協力を得ることで,ケニア選手権出場レベル15名のアスリートの測定をナイロビ郊外にて実施した.前回のケニアにおける測定において実施した形態,筋腱の形状特性,ランニングフォームに加え,測定システムの改良・開発を行うことで筋と腱両組織の力学的特性の計測を行うことができた.これまでケニア長距離選手の筋腱の力学的特性についての報告は皆無であり,オリジナリティの高いデータを取得できたと考えている. 2)男子高校駅伝 上位入賞校のジュニア選手約50名 を対象とし,上記ケニア選手と同様の測定を行った.また,大学・実業団における成人選手につ いても測定日程を確定した. これらの研究を通じ,日本,ケニアに共通して競技パフォーマンスの高い選手は,特徴的な筋と腱の力学的特性をもつことが明らかとなった.一方,日本とケニアの両選手間で差異のみられる因子も見つかっている.現在,分析が終了したものから順次,国内外の学会ならびに専門誌に投稿中,ならびに投稿準備中である.得られた知見は陸上競技のみならず持久力を 必要とするスポーツにおけるタレント発掘,トレーニング手法の改良・開発の基礎資料として貢献することが期待できる.
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