研究概要 |
生涯体育につながる効果的な持久走の指導法を明らかにするため、特徴の異なる3種類の代表的な持久走を取り上げ、持久走中の生理学的特性、運動学的特性、及び走者の意識の視点からそれぞれの持久走の特性を比較検討した。 初年度(H23年度)は、高校2年生男子27名を対象に3,000mの持久走を実施した。持久走の種類は、①全距離を最大努力で走る全力法、②主観的運動強度(RPE)の尺度が13「ややきつい」の努力感で走るRPE法、③クラス全員がほぼ同じ時間で走り終わるように持久走能力に応じて3つの長さのトラックを選択して走らせる内回り法の3種類であった.走速度,ストライド長,ストライド頻度,心拍数を持久走中に継続して測定した.また、指導法実施前後に持久走に対する意識調査を実施した.その結果,全力法では持久走の経過に伴いストライド長に依存して走速度の顕著な低下が認められた。また、心拍数も経時的に低下傾向を示し、高い運動強度による疲労感や痛みが持久走嫌いを助長させる可能性が示唆された.一方,RPE法と内回り法では持久走の間中、走速度が維持された.これは,それぞれ主観的運動強度と他者追従という走速度の指標を得たことによるものであると考えられた.このことから,自己のペース配分や運動強度への気づきが,持久走に対する好印象を助長させる可能性が示唆された. 2年度(H24年度)は中学2年生男子57名を対象に3種類の2,000m持久走を実施した。その結果、前年度の高校生とほぼ同様の結果が得られた。 最終年度(H25年度)は小学5年生男子30名を対象に3種類の1,000m持久走を実施した。その結果、3種類の持久走間に顕著な差は無く、小学生の段階では各持久走の特性を理解して走る弁別能力が十分に発達していないことがうかがえた。
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