研究課題/領域番号 |
23500733
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
池田 恵子 山口大学, 教育学部, 准教授 (10273830)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 日英比較 / 日独比較 / 帝国主義 / ファシズム / スポーツ史 |
研究概要 |
ヨーロッパ流スポーツ哲学から、帝国主義およびファシズム期の問題点を相対化するために、Henning Eichberg著 Bodily Democracy: Towards a Philosophy of Sport for All, (Routledge: London and New York, 2010)を精読し、書評を英国スポーツ史学会刊行物Sport in Historyに投稿した(掲載可、年度内未刊行)。またClaus-Christian Szejnmann著、Ordinary People as Mass Murderers(2008)及びNazism in Central Germany(1999)、宮本守雄著『勝利への道』、高橋健二・ヤーコップ・ザール著『ヒットラー・ユーゲント』(1941)の分析に努めた。9月には、ケンブリッジ大学にて"The History of Sport in Japan: the British Influence through the Medium of Sport on Imperialism, Nationalism and Gender"およびBSSH英国スポーツ史学会、ロンドンメトロポリタン大学にて"Sports Writing in Britain, the Early Radicals and the New Left."を公表した。3月には、日英比較セミナーを主宰し、趣旨解説およびMike Hugiins氏による"Visual Turn and Sport"の全翻訳を『体育史研究』に投稿している。文字資料に加えて、図像資料からも読み解かれる政治的側面に注目し、帝国主義およびファシズムとスポーツの関係史を日英独の観点から探究することにこうした方法論を活用し、次年度の研究計画の円滑な遂行につなげたいと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績欄に記載の通り、順調に研究計画を遂行中である。先行研究の整理と更なる一次資料の収集、分析概念を補強する2次資料の解読に努めることができた。分析した図書については、書評という形で、国際ジャーナルに投稿し(英国スポーツ史学会編Sport in History)、投稿は受理され、掲載可となった。印刷は2012度号になる予定である。また2011年度の成果を国際研究大会の場で公表した(ケンブリッジおよびロンドン)。さらに、年度後半においては、日本においても日英比較セミナーを開催し、英国における最先端の方法論を国内に紹介する機会を捉えることができた。このセミナーを通して得られた成果については、2012年度号への掲載に向けて、国内ジャーナルに投稿した。また、年度後半にケンブリッジ大学にて公表した論文内容(1200字相当)は、2013年度に刊行計画がある書物に刊行される運びとなった(8000字相当)。現在執筆中であり、良好に進んでいる(6300字)。2012年度に開催される国際学会大会においても、年度後半の成果を公表の予定であり、すでにエントリーを済ませせている。
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今後の研究の推進方策 |
スポーツ・アマチュアリズムおよびアスレティシズムに関する日本的受容の脈絡の再検討をはかる。スポーツ思想の問題は多くが「医学」思想と関連しており、申請者もこれに関する論文を公表してきた(池田恵子・辻井文絵著「「生きるからだ」再考―「同意の文化」を超えて、今への提言」山本徳郎他監修・編著『多様な身体への目覚め―身体訓練の歴史に学ぶ―』アイオーエム、2006年)。研究協力者、Neil Carter氏は、スポーツと医学史を扱っており、Carter氏から提供される研究成果を下に、プロジェクトAの更なる深化に努めたい。カーター氏の書物(Medicine, Sport and the Body: A Historical Perspective) は2012年6月刊行予定である。計画段階では、2012年度についても、BSSH英国スポーツ史学会での公表を計画していたが、4月より大学の専修主任を任じられ、学会開催の時期と大学院入試が重なることが判明した。そこで、BSSHでの公表ではなく、英国、ドゥ・モンフォート大学ICSHC国際スポーツ史研究所主催の「日英比較研究セミナー」(7月上旬を予定)を捉えて、研究の公表につとめたいと考えている。また、同時期にLiterary London Soceity(ロンドン文学学会)が、2012年、ロンドンオリンピックを機に、7月4-6日にかけてスポーツ史を含む学際的な分野の研究者と連携し、テーマを「スポーツ」としたため、Literary London Conference 2012にもアブストラクトを送り、4月現在、発表が受理され、公表が約束された。新たな資料収集にも努めたいと考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画書の記載内容に変更はなく、英国、ドイツおよび日本における19世紀から20世紀前半に関するスポーツ史、帝国主義、ファシズム関係史文献資料を購入し、史料の読解に努める。また、2010年より研究拠点としている英国ドゥ・モンフォート大学国際スポーツ史文化研究所(ICSHS)および国際学会発表のための渡航費および滞在費、英文校閲費、謝金代を本研究費より充当し、研究費を有効に活用したいと考えている。海外渡航費、海外との交流の必要性に関しては、研究計画書に記載の通り、以下の点からも補足しておきたい。本研究の成果を公表し、具体的な研究協議を重ねる上で、国内外の研究者と学術交流を行い、先端の研究動向を捉えておくことは、本研究にとってきわめて重要である。これまでも、海外の研究者より得た情報は、個別研究に資するものとするだけでなく、日英比較セミナーを開催するなどし、国内の主だった研究者に対し、情報の公開に努めてきた。本研究を着想するに至った背景には、ISHPES国際体育・スポーツ史学会における研究活動から、英国スポーツ史学会の正式会員として活動するに至った研究交流の成果がある。2009年の国際体育スポーツ史学会では評議員に選出され、同年よりBSSH英国スポーツ史学会の正式会員として、2009年、2010年、2011年と研究発表を継続している。2010年度にはICSHCにおいて長期調査を行っており、本研究を継続する上で、きわめて重要な拠点研究所として機能している。本研究プロジェクトを支援する形で、ICSHCは、2010年に引き続き、2012年7月に日英比較セミナーの開催を予定している。このセミナーは本テーマを遂行する上で、申請者が発案したものであり、2010年より第1回が開始されている。2012年度も第3回の開催に向けて始動を開始している。
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