研究課題/領域番号 |
23500735
|
研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
川本 真浩 高知大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (20314338)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 英連邦 / エンパイア・ゲームズ / イギリス帝国 / コモンウェルス / スポーツ / 歴史 |
研究概要 |
本年度をとおしておこなった作業は、近現代イギリス史、イギリス帝国史、コモンウェルス史、近代スポーツ史、カナダ史、オーストラリア史、ニュージーランド史などに関わる研究文献や一次史料の渉猟・収集ならびにそれら史資料の整理とデータ作成である。それらの史料やデータを基に考察を進めた結果、英連邦大会(エンパイア・ゲームズ及びコモンウェルス・ゲームズ)の開催状況や関係諸勢力の動き、社会的な背景等が次第に明らかになってきた。また、その考察過程において、当初の想定よりも時代や対象の枠組みを大きくとること、すなわち19世紀末から1970年代にかけての時期について本国やいわゆる白人コモンウェルスのみならずアフリカやアジアの動向にも当初の想定以上に慎重かつ綿密な検討を加える必要があることもわかった。とくに、英連邦大会が直裁に映し出したものとして、新興独立国の自立性希求ばかりでなく、その国際舞台での自己主張ないし国家宣伝への熱意も軽視できない意味をもっており、それらにも注目することで「解体」ないし「崩壊」とは逆向きのベクトルがより詳細な形で確認できるものと見込まれる。そのようなコモンウェルスの変貌を反映して変化した英連邦大会の特性については、同時期に並行して開催されていたオリンピックや他の国際スポーツとの関係も視野に入れて論じることが肝要であるとの見通しも明確になった。 こうした研究の進展による内容面での再検討及び調整事由も考慮に入れながら、史料調査の計画を練り直したうえで、平成24年2月末から3月前半にかけて、国内(1日)海外(イギリス13日)でそれぞれ史料調査を実施した。とくにイギリスにおける調査では、コモンウェルス事務局図書館、国立公文書館、大英図書館が所蔵する貴重かつ有用な史料を入手することができた。3月後半からはそれらの史料に関する整理及びデータ作成にとりかかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第2次世界大戦前後のエンパイア・ゲームズに関するデータを新聞資料や大会刊行物を中心に閲覧・収集し、内容の整理ならびに基礎データの作成をおこない、それらに基づいて考察を進めた。とくに最初期に開催された大会では、開催地の変更(1934年)、大戦による中止(1942年,1946年)、戦後初の大会開催(1950年)という難事に対する関係諸勢力の対応や報じられかたを確認しながら、1970年代あたりまでの開催地決定から開催事業までの出来事の流れも再構築しつつある。とりわけ1950年代から60年代にかけての植民地独立が相次いだ時期に、そうした帝国=コモンウェルスの構成単位(国・地域)の変化が英連邦大会の開催・運営・参加状況に及ぼした影響についても、基本的事実を整理するなかで明らかになってきた。これらは、研究過程のなかの現段階としては、おおむね当初の計画どおりあるいはそれ以上の進捗状況であると考えられる。 他方、海外での史料状況の確認に想定以上の時間を要したこと、所属機関における他の業務との関係でイギリスでの史料調査の時期が当該年度の終わり近くまで確定できなかったことなどもあって、国内外での史料調査が当初計画の規模及び内容に達しなかった面がある。とくにイギリスに存在する関連史料は質・量ともに予想を大きく上回るものであり、後述のような追加調査が必要であると考えられるほどであった。もっとも、これらの遅延等は今後の研究計画遂行に特段の支障や大きな変更をもたらすものではなく、平成24年度に実施予定の研究活動は所期の目的ないし内容にそったレベルを達成することは十分可能である。 これらの事情を合わせ考えると、「現在までの達成度」は上記のとおり「おおむね順調に進展している」と評価できる。
|
今後の研究の推進方策 |
年度をとおして、研究文献や一次史料の渉猟・収集にあたりながら、入手した文献・史料の整理と分析及び考察を進める。また、本年度におこなう史料調査の準備に本格的に着手し、調査予定の図書館ないし文書館の史料状況ならびに利用条件等を把握したうえで、詳細にわたる計画を策定し、実施する。 とくに上記後段の詳細については次のとおりである。まず、オーストラリア及びニュージーランドでの史料調査は当初の計画よりもやや縮小して実施する。これは、平成23年度のイギリスにおける調査等で判明した史料状況により、オーストラリアとニュージーランドでの調査期間等を短くしても所期の目的は達せられると判断したことによる変更である。主な調査予定施設はシドニー及びウェリントンの図書館及び文書館である。他方、イギリスには当初の計画で見込んだ以上の史料が存在することが確認できたので、オセアニアでの調査の縮小分と平成23年度からの繰り越し分をあわせた範囲内で、イギリスでの追加史料調査を実施する。主な調査予定施設は国立公文書館、大英図書館及びコモンウェルス事務局図書館である。 これら調査及び作業をへて、年度末までには歴史学関係の研究会などで本研究の中間報告を行う機会が得られるよう努める。同時に、研究総括につながる見通しをたてたうえで、次年度の初めに紀要ないし学術誌への論文執筆にとりかかることにより、研究成果に関する最終報告に向けた準備を進めていく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度内に執行される経費が極端に少なく、平成24年度に繰り越される研究経費が相当額にのぼるが、それは以下に述べるような事情によるものである。 ひとつには、所属機関での電子リソース利用システムの改善などもあって、研究遂行のために必要な文献の探索・入手に計画立案時点で想定されたほどの費用がかからなかったということがある。それにより、国内での文献調査については調査機関や日程を変更ないし縮小して実施したことが、未執行額が増える一因となった。さらに、海外での史料調査の内容の確定までに想定以上の時間を要したこととその実施時期が年度末近くにずれこんだことによる影響も大きかった。その関連経費の執行時期が遅くなったため、平成24年度への繰越額には4月に支払うべき経費が含まれている。 平成24年度は、上記「今後の研究の推進方策」に述べたように、当初の計画よりも規模と内容を縮小した形でオーストラリア及びニュージーランドでの史料調査をおこなう。さらには、その調査計画縮小分による余剰と平成23年度の文献収集にかかる節減等による繰り越し分をあわせて、イギリスでの追加史料調査を行う。当初の予定どおりに実施する国内での作業もあわせて、全体としては、平成23年度から繰り越された経費及び平成24年度に配分される経費をあわせた額でもって、当初の計画でうたった「研究の目的」に適う成果が得られるような研究遂行が可能になるものと見込まれる。
|