研究課題/領域番号 |
23500736
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
中西 純司 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (90243849)
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キーワード | 民間スポーツ・フィットネスクラブ / スポーツ経営 / 苦情行動 / 抑制要因 / 刺激要因 / 促進要因 / 顧客苦情マネジメント戦略 / 市場志向 |
研究概要 |
本研究では,「苦情は顧客からの贈り物」(Barlow and Moller,1996)というポジティブな観点から,スポーツ経営における「顧客苦情マネジメント」理論を構築していくために,民間スポーツ・フィットネスクラブ(以下,「民間クラブ」という)経営に焦点をあてながら,課題A:顧客苦情マネジメント戦略研究,課題B:顧客苦情行動研究,課題C:サービス・クオリティ/顧客満足・不満足研究の3つを設定し,3年間の研究を進めている。 今年度は,昨年度に実施した「顧客苦情マネジメント戦略調査票」において収集されたデータ(有効回収数・回収率;137,13.7%)に関して,詳細な統計的分析を行った.その結果,(1)全体の77.5%の民間クラブ組織が顧客苦情を「抑制要因」もしくは「刺激要因」として認識しているのに対して,「促進要因」としてポジティブに捉えているのは18.8%と低い割合であったこと,(2)過去1年間で民間クラブ組織に寄せられた顧客苦情件数は,「氷山の一角」ではあるが,平均128件(最小4件,最大1,500件)であり,①レッスンや各種プログラム全般および会員サービスの質,②クラブ利用のルールやマナー等を遵守しない顧客の勝手な振る舞いや行動,③スタッフの接客力・指導力・専門的知識の不足,そして④施設・設備環境・付属設備・備品関連等に関する顧客苦情の割合が最も高かったこと,(3)民間クラブ組織がそうした顧客苦情に対して的確に対応するためのマネジメント戦略として,PDCAサイクルに基づいて「P.苦情哲学・苦情促進」「P.苦情マネジメント体制」「D.苦情対応プロセス」「C.苦情処理・分析・報告」「A.苦情情報フィードバック」といった諸活動を実践していること,(4)「市場志向」の高い民間クラブ組織ほど,こうした5つの顧客苦情マネジメント戦略を積極的に展開していること,などが明確にされた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は,平成23・24年度の課題であった「課題A:顧客苦情マネジメント戦略研究」と「課題B:顧客苦情行動研究」の成果と理論,つまり「課題A-B間関係」を踏まえた上で,「顧客苦情マネジメント戦略モデルとクラブ会員の消費者苦情行動メカニズムとの相互関連性」(課題B-C間関係)について調査を実施し,吟味する予定であり,そのための予算も計上していた。しかしながら,課題Bと課題Cの実施にあたって,クラブ会員の顧客苦情行動に関する仮説的構成概念とインディケータの抽出,及び「クラブ会員の苦情行動に関する質問紙調査票」の作成に多大な時間を取られ,調査実施時期が年末にまで及ぶことになってしまった。こうした調査実施時期の大幅な遅れと年末というタイミングの悪さから,調査対象として抽出していた民間クラブ6ヶ所におけるクラブ会員からの調査協力・同意等を得ることができなかった。 しかしながら,すでに留置調査法による質問紙調査の実施準備はできている.そうした意味で,「課題B-C間関係」についての研究課題の遂行状況は5割程度と判断できるため,平成26年2月3日付けで「様式F-14 科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)補助事業期間延長承認申請書」を提出し,調査実施費等の未使用額すべてを平成26年度経費に充てることにした。 現在,「課題B-C間関係」から得られる予定の研究成果を日本体育学会第65回大会(平成26年8月25~28日,岩手大学ほか)において口頭発表するようエントリーするとともに,調査協力クラブへの調査実施依頼の確認(クラブ状況事前調査を実施する予定)と,事前調査に基づく「クラブ会員の苦情行動に関する質問紙調査票」の再確認(追加・修正等)などの研究作業を行うための諸準備を鋭意進めているところである。 以上のような達成状況に鑑み,「(3)やや遅れている」という自己評価をした。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策としては,平成25年度中に遂行すべきであった,以下のような諸手続きを円滑に実行することが最優先課題である。 (1)「課題A:顧客苦情マネジメント戦略研究」については,顧客苦情マネジメント戦略モデルの分析枠組みに従って,多変量解析や共分散構造分析等を用いた統計分析を行い,本学の「立命館産社論集」第49巻第4号(2014)に研究成果として公開するとともに,その抜刷と補足資料を調査研究成果報告書として調査協力クラブに配布した。こうした研究成果を踏まえた上で,課題B「不平・不満を持ったクラブ会員(退会・離脱者を含む)はどのような苦情行動を選択し,民間クラブ側の顧客苦情マネジメント戦略に対してどのような反応をしている(した)のか」について吟味していくために,「クラブ会員の苦情行動と顧客苦情マネジメント戦略との因果関係に関する基本理論モデル」を構築した。今後,そうした基本理論モデルからいくつかの有益な仮説群を演繹する。 (2)上記(1)で演繹された仮説群を検証し基本理論モデルの信頼性と妥当性を確認するために,平成24年度に回収できた民間クラブの中からブロック毎に1クラブの合計6ヶ所を無作為抽出し,各民間クラブ(経営者・支配人)を訪問し,クラブ状況事前調査を実施するとともに,既存クラブ会員と退会・離脱クラブ会員の両方に対する調査の趣旨説明と調査実施依頼を行う。そうした事前調査の結果を基に「クラブ会員の苦情行動に関する質問紙調査票」を再確認(追加・修正を含む)し,留置調査法による質問紙調査を実施し,調査票の回収と調査データ入力作業等が終了し次第,速やかに,統計解析ソフトによる調査データ分析作業に取り組む予定である。 今後,上記の諸手続きによって,「課題A-B-C間関係」について実証的に明確にし,スポーツ経営における顧客苦情マネジメント戦略モデルの構築を図っていくこととする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は,平成23・24年度の分析結果(課題A-B間関係)を加味しながら,「顧客苦情マネジメント戦略モデルとクラブ会員の消費者苦情行動メカニズムとの相互関連性」(課題B-C間関係)について調査をし,吟味する予定であった。 しかし,クラブ会員の調査協力・同意等が得られなかったため,当初予定していたクラブ会員調査を実施することができなかった。その結果,調査実施費等が未使用額として発生した。 上記の理由から,「課題B-C間関係」の吟味は,次年度に実施することとした。また,次年度はクラブ会員の調査協力・同意が得られる民間クラブ6ヶ所を有為抽出法(機縁法・紹介法)により選定した上でクラブ会員調査を実施し,未使用額はその経費に充てることとしたい。 具体的な経費は,関連図書購入費,調査実施費(印刷費・通信費・研究補助費),調査研究旅費,研究成果報告書・概要パンフレット印刷費などである。
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