研究実績の概要 |
本研究では,「苦情は顧客からの贈り物」(Barlow and Moller,1996)というポジティブな観点から,スポーツ経営における「顧客苦情マネジメント」理論を構築していくために,民間スポーツ・フィットネスクラブ(以下,「民間クラブ」という)経営に焦点をあてながら,4年間の理論的・実証的研究を進めてきた. 平成23~24年度には,顧客苦情マネジメント戦略に関する仮説的構成概念モデルの構築と検証を行った結果,顧客苦情マネジメント戦略モデルが,PDCAサイクルに基づいて,「P.苦情哲学・苦情促進」「P.苦情マネジメント体制」「D.苦情対応プロセス」「C.苦情処理・分析・報告」「A.苦情情報フィードバック」といった概念から構成されることが明確になった. 続いて,平成25年度には,こうした顧客苦情マネジメント戦略モデルと「市場志向」概念との関連性について分析した結果,市場志向の高い民間クラブ組織ほど顧客苦情マネジメント戦略を積極的に実践しているということが把握できた. 研究計画最終年度となる本年度は,顧客苦情マネジメント理論を基軸とした「マーケティング力」に焦点をあてて研究を進めた.そのため,FIA正会員の民間クラブ816ヶ所(無作為抽出)を対象に,平成27年2月2日~3月6日にかけてWeb調査を実施し((株)マクロミルとの契約),389,47.7%の有効回収数・回収率を得た.その結果,(1)民間クラブ組織が実際に採用している顧客苦情マネジメント行動が「苦情顕在化促進・対応行動」「苦情分析・フィードバック行動」といった2つから構成されること,(2)ヒューマンサービス組織特性を有する民間クラブ組織ほど顧客苦情マネジメント行動が充実していること,(3)マーケティング力のある民間クラブ組織ほど顧客苦情マネジメント行動に力点を置いたスポーツ経営を実践していること,などが明確にされた.
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