研究課題/領域番号 |
23500739
|
研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
前田 寛 大分大学, 工学部, 教授 (60181591)
|
研究分担者 |
岡内 優明 大分大学, 工学部, 准教授 (20194334)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | テニスラケット / ストリング張力 / トップスピン / 回転速度 / ボールの衝突 / 摩擦力 |
研究概要 |
本研究は,手関節の障害を起こさないトップスピン技術を明らかにして,安全にかつスピーディな技術の上達に役立てることを目的としている。その技術とは主に手関節周りの運動の仕方であり、その運動にはトップスピンをかけるためのボールとラケット面との摩擦力が関係している.23年度は先ず、この摩擦力の測定方法を確立させようとした.そこでラケット面を構成する1本のストリングに直接動歪みゲージを接着し,ボールがラケット面に衝突した際にストリングに生じる張力から,ボールに回転をかけるためにラケット面に生じる摩擦力を測定した.同時に、今回購入した高速度カメラを用いて衝突の瞬間を撮影し,その映像から入射角と反射角,ボールの回転速度を測定し摩擦力を算出した.ストリング張力から得られた摩擦力と映像から算出した摩擦力を比較した結果、ストリングの張力からでも摩擦力が測定できることが明らかになった. これまで1本のストリングに動歪みゲージを接着していたためラケットを固定しないと衝突点が定められなかったが、4本のストリングに接着することにより、測定可能な衝突面が広くなり,手で保持した場合や実際のストローク場面でも摩擦力の測定が可能となった.その結果を、日本体育学会第62回大会「テニスラケットとボールの衝突面に生じる摩擦力の測定」で報告している.また、おおよそ入射角度が32°から35°の間で摩擦力が最大になることがわかった. このように23年度は実際のスイング中のラケットとボールの衝突角度と摩擦力の関係を明らかにする方法が確立できた.今後、この方法を用いることにより、実際にラケットでボールを打突した際の衝突中の実験データを収集することができ、最も摩擦力が大きくなるボールとラケット面との衝突角度等についての考察が可能になった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回購入した高速度カメラを用いて,入射角と反射角,ボールの回転速度から算出した摩擦力と,ラケットのストリングに接着した動歪みゲージで検出したストリングの張力から算出した摩擦力を比較検討した結果、ほぼ同じ結果が得られ、23年度の目的である摩擦力が最大となる衝突角度を探ることができた.また、これまでラケット面を構成する1本のストリングに動歪みゲージを接着していたが、4本のストリングに接着することにより、測定可能な衝突面の面積が広くなり、手でグリップ部を保持した場合でも、摩擦力の測定が可能であることがわかった.以上のことから、おおむね順調に進展していると考えられる.
|
今後の研究の推進方策 |
グリップ部の握り方がウエスタングリップ,あるいはイースタングリップなど握る角度が異なると,スイングの軌跡やラケットの角度も変わってくるし,手関節部の掌屈・背屈,回内・回外,橈屈・尺屈の3軸周りにおけるそれぞれの負担の割合も違ってくる。そこで,高速度カメラを用いてトップスピンをかけるスイングをした際のラケットの軌跡を三次元分析し,手関節の3軸周りの可動域,角度―力特性,速度特性,最大パワーを推定する。そして最大摩擦力が得られ、かつ手関節の障害を起こさないラケットのスイング技術を明らかにする.
|
次年度の研究費の使用計画 |
23年度は旅費の執行が間に合わなかったが、24年度は研究成果の学会発表を海外で行う予定である.また、実際にラケットをスイングしてボールを打突し、手関節まわりの力学的信号を検出する実験を行うため、9軸のジャイロセンサーなどの電気信号を収録できる、屋外でデータ収集が可能なシステムが必要になる.
|