研究課題/領域番号 |
23500742
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研究機関 | 鹿屋体育大学 |
研究代表者 |
森 司朗 鹿屋体育大学, スポーツ人文・応用社会科学系, 教授 (80200369)
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研究分担者 |
中本 浩揮 鹿屋体育大学, スポーツ人文・応用社会科学系, 講師 (10423732)
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キーワード | 重力認知 / 運動発達 / 運動学習 / 習得過程 / 捕球方略 / 一致タイミング課題 / 重力 |
研究概要 |
本年度は、落下に関する重力認知が捕球方略の発達に与える影響について検討することを目的に、2つの実験を行った。第一の実験は、昨年度の研究で確認された実験方略を中心に、小学4年生と中学生の被験者を対象に異なる投射速度で落下してくるボールの捕球方略に関して検討を行った。実験課題は、投射機から12m離れた位置に被験者立ち、開始位置前後1.5メートルずつの位置に落下してくるように3種類の投射初速度(前:11.7m/sec, 開始位置:12.5m/sec, 後:13.6m/sec)でランダムに投射されて落下してくるボールの捕球を課題とした。測定は3次元動作解析のためにOPTOTRACK(NDI社製)を使用し、分析は、動作開始時間と投射直後から捕球までの速度に関して行った。その結果、動作開始時間に関しては、小学生より中学生の方が投射位置の違いの影響を受けることが明らかになった。また、動作速度に関しては、中学生はボール投射後0.6秒前後から投射速度の違いによる動作速度の違いが確認されたが、小学生では、動作開始地点へボールが落下する投射速度がピークになる0.9秒前後から投射初速度の違いが動作速度に影響を示していた。このことは、中学生は投射速度が最も早い段階から投射速度の影響を受けていたことを示している。第2の実験では、ボール捕球を行った個々の重力認知の発達的な違いが捕球方略における予測へ影響しているかを明らかにするために、異なる重力(1/2G,1G,2G)で落下する刺激に対する一致タイミング課題を行った。その結果、中学生は小学4年生よりも遅い重力加速度では、尚早反応を起こしやすいが、1Gよりも速い重力加速度では小学生に比べて予測の誤差が小さかった。以上の2つの結果より、中学生の方が小学4年生よりも重力の影響を受けており、年齢が高くなるほど重力の認知を学習していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、昨年度の研究で確認された実験方略を中心に、小学4年生と中学生を対象に実験を行った。昨年度の段階で、大学生の傾向がある程度示唆されたので、本年度は当初の予定にあった大学生の代わりに認知機能が変化するであろうと予測される10歳前後の小学4年生を対象に研究を行った。そのため、当初予定していた落下開始直後以降で遮蔽めがねを利用しての重力認知の影響を確認する方法で安全面などで問題が発生する可能性が考えられたので、これまで、申請者たちが開発してきた重力加速度の異なる一致タイミング課題を導入し、重力認知の発達的差異から検討を行った。その結果、中学生の方が小学4年生よりも重力の影響を受けている可能性が示唆された。このことは、年齢が高くなるほど運動技能学習における重力認知の影響を受けていることを示唆するものであり、今回の研究の目的を明らかにするための知見が得られた。また、重力の予測と頭部のコネクションを明らかにするために、頭部の加速度計の使用を試み、予備的な結果を得ることができた。しかしながら、これらの結果ではまだ不十分であり、さらなる検討を次年度に持ち越すことになったが、今年度の予備実験が順調に進んだことにより、次年度十分にこれらの課題に関しても到達可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、昨年度実施できなかった大学生と重力認知が未熟であろうと考えられる幼児を対象に、重力の予測と頭部のコネクションを明らかにするために、昨年度パイロット的に行った頭部の加速度計を使用して実験を推進していく予定である。特に、幼児に関しては、現状使用している投射機を使用しての実験は困難であるため、昨年度作成した幼児でも捕球可能な投射を行える機械を作成して研究を行う予定である。以上の結果及びこれまでの結果を通して、重力認知機能の発達的メカニズムに関して検討をおこなう。 具体的な事件方法としては、被験者:被験者・児は、大学生と幼児を対象に行う。また、実験課題・手続きに関しては、大学生に関する実験では、投射機から12m離れた位置に被験者立ち、開始位置前後1.5メートルずつの位置に落下してくるように3種類の投射初速度(前:11.7m/sec, 開始位置:12.5m/sec, 後:13.6m/sec)でランダムに投射されて落下してくるボールの捕球を課題とし、動作開始時間と投射直後から捕球までの速度に関して分析を行う。同時に、ボール捕球を行った個々の重力認知の発達的な違いが捕球方略における予測へ影響しているかを明らかにするために、異なる重力(1/2G,1G,2G)で落下する刺激に対する一致タイミング課題を行う。 一方、幼児に関しては、ボールの自然落下の高さを変えた場合のボール捕球能力に関して検討を行う。さらに、大学生、幼児のとも角速度計を利用して、頭部の動作と重力のコーディネーションの測定・解析を行う。 最終的には、これまでの研究結果から重力認知の発達的な観点から効果的な運動学習の方略の開発につながる提言を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
1)研究に関する最近の知見・資料を得るために国内・国外の学会に参加するために旅費を申請する予定である。 2)実験を効率的に進めるために研究補助を雇うことにしているため人件費と研究の協力に関して謝金を申請する予定である
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