研究概要 |
多関節運動における力-速度波-パワー関係を明らかにし,動作特異的な筋パワーの向上を目指すトレーニングへと展開する研究基盤を確立することが目的である.フリーウエイトトレーニングにおける多関節運動は,動きの制約が少なく,データの信頼性が問題となる.本研究は,1. 各種レジスタンストレーニングにおける筋パワーの測定条件の検討を踏まえ,2. 各種レジスタンストレーニングにおける最大パワーの信頼性を検討することが,主たる研究課題であるが,多関節運動における等速性筋力発揮については十分な知見が得られておらず,昨年度は主にこのことについて検討した. 測定はダイナモメータを内蔵したサーボ系ケーブル駆動型等速性筋力計を利用した.ケーブル牽引式のアタッチメントを使用し,バックスクワットおよびフロントスクワットにおける等速生筋力発揮を行った.運動の設定速度はダイナモヘッド軸の回転速度を30,60,90,120,150,180deg/secの6種類の角速度を選択した.各速度においてそれぞれ5試行実施した.2要因分散分析の結果,いずれの速度においても収縮要因に有意差が認められた.また,伸張性において角速度180deg/secは30,60,90deg/secの各速度よりも有意に高い値が認められた.短縮性では速度間で筋力に差は認められなかった.信頼性係数は,短縮性において0.75から0.93の値が得られた.一方,伸張性では30,60deg/secにおいては0.8以上の信頼性係数が得られたが,90deg/sec以上の速い速度における信頼性係数は0.4未満であった.遅い速度では高い信頼性が確認できるが,速度が速くなるほど信頼性が低くなった. 以上のことから,多関節運動における等速性筋力発揮の信頼性は一定以上の速度において低く,本来検討したい高速度域でのパフォーマンス評価には適さないと考えられた.
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今後の研究の推進方策 |
現在,トレーニング現場での利用が盛んになってきている筋パワー発揮測定器の有効活用に資するために,本研究では最終的に力ー速度曲線の推定と,性別•筋力別プロフィールの作成を予定している. これまで,上記の目的を達成するために,妥当基準の信頼性を中心に検討してきた.その結果,単関節運動で実施することのできた高速度域での等速性筋力発揮は,フリーウエイトにおける多関節運動においては適切な評価ができないと判断された.これを受け,今後の推進方策としては,等張性筋発揮に焦点を絞り,筋パワー測定による力ー速度曲線の推定に焦点を絞ることが妥当と考えられた. 従って,今後筋パワー測定器(等張力短縮速度速定トランスデューサー:加速時計内蔵型とロータリーエンコーダ内蔵型)については,エアコンプレッサー負荷ケーブル牽引型の筋パワー測定器を妥当基準として併存妥当性を検討するとともに,至適負荷変量としての速度について検討を進める.研究計画における研究項目に挙げていた多関節運動における等速性筋力と等張性筋力の関係の検討については,課題から除き,最大パワー発揮%MVCの推定を中心に検討を進め,RFD(Rate of Force Development), IES(Index of Explosive Strength), Force gradient およびAccelerationの各変量の特性を検討する.
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