本研究の目的は,簡便な機器による各種多関節運動時の最大パワー発揮%MVCの推定,多関節運動におけるケーブル駆動型等速性筋力測定の信頼性,同一多関節運動における等張力性収縮と等速性収縮の関係比較をすることであった.最大パワー発揮%MVCの推定を検討するにあたり,筋力発揮動作におけるパフォーマンスの信頼性を予め検討することが前提であり,等速性筋力測定の信頼性を中心に研究を進めた.等速性筋力は膝関節の屈曲伸展など主に単関節運動の評価が一般的であり,これまで多くの知見が得られている.しかし,多関節運動においては,脚伸展あるいは股関節体幹伸展動作を除き等速性運動の力-速度関係の特性は明らかになっていない.等速性筋力の測定はダイナモメータを内蔵したサーボ系ケーブル駆動型等速性筋力計を利用した.多関節運動を実現するためにケーブル牽引式のアタッチメントを利用した.運動の速度はダイナモヘッド軸の回転速度の6速度に設定した.スクワット動作において発揮された力は遅い等速運動時に大きな値を示した.また,異なる速度であっても初期の発揮パターンは同様な傾向と示すと考えられた.各速度における等速性筋力のpeak forceは速度が増すにつれ低下した.異なる速度における測定値から回帰式のあてはめを行った結果,良好な適合が認められた.等速性筋発揮によるスクワット動作において力と速度の間には直線関係を仮定することができると推測される.筋パワーの構成要素である力と速度の関係はこれまでの研究において筋収縮特性曲線として指数関数で示されることが知られている.スクワット動作における速度と力の関係は直線関係に良く適合した.しかし,発揮パターンは単純ではなく,RFD等の多面的観点からパワー発揮を評価し,多関節運動の力-速度関係を検討する必要があると考えられる.
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