筋力発揮時にみられる両側性機能低下と反応時間に見られるそれとは異なるメカニズムによって制御されている可能性が示唆されている。それぞれのメカニズムはこれまで個別に検討されてきており、同一の動作様式を用いて両者を調べた研究は見当たらない。そこで、同一動作(等尺性示指外転動作)を用いて、筋力発揮時および反応時間課題遂行時の脳波を解析することによって、それぞれの両側性機能低下のメカニズムを比較検討することとした。 1年目は、筋力・反応時間測定装置に改良を加え、2年目は、新たな筋電図記録システムを導入したため、予備実験を実施し、新しい実験システムを検証した。これらの改良により、実験のスムーズな遂行が可能になり、筋電図のS/N比も向上した。最終年度は、本実験として、体育大学学生24名を両側トレーニング群、一側トレーニング群、対照群、各8名に分け、発光ダイオードの点灯による視覚刺激に対して、できるだけすばやく等尺性示指外転筋力を発揮する単純反応時間課題を、10回×2セット、週3日、3週間、両側トレーニング群は両手同時に、一側トレーニング群は片手ずつトレーニングした。対照群はトレーニングを行わなかった。トレーニング開始前、3週間後に脳波、筋電図、筋力、反応時間の測定を行った。 現在、両側同時、一側左、一側右の反応時間課題条件別に、トレーニングによる反応時間の変化、反応準備期および反応実行期の脳波振幅の増減、筋力および筋放電量の増減とトレーニングの種類との関係についてデータの詳細な解析を進めているところである。これらの結果と先行研究論文の知見を総合し、「トレーニングによるbilateral deficitの特異的修飾」に大脳皮質レベルのメカニズムである「注意の分散」や「大脳半球間抑制」がどのように関与しているかを総合的に考察し、論文として投稿する準備を進めている。
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