研究課題/領域番号 |
23500758
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
平田 竹男 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (00445868)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | スポーツによる地域振興 / スポーツクラブ経営モデル / スポーツマネジメント |
研究概要 |
2011年7月のサッカー女子日本代表W杯優勝を受け、研究代表者平田竹男が日本サッカー協会専務理事時代に女子サッカー強化・普及に携わり、成功した経験を2011年9月「なでしこジャパンはなぜ世界一になれたのか?」という本にまとめた。マイナースポーツであった女子サッカーでの成功事例をまとめることはプロサッカークラブマネジメントにおいても強化・普及・資金獲得の面で非常に意義のあるものであった。8月8~17日にはパリ、ジュネーブ、ロンドンでスポーツマネジメントビジネスの地域振興との関係研究のため、スポーツコンサルティング会社関係者と会談を行った。また、スポーツビジネスへの投資に関する情報収集のため欧州経済情勢について金融機関関係者と会談を行った。12月にはJ-GREEN堺を視察し、大阪府サッカー協会専務理事の藤縄信夫氏、J-GREEN副センター長の塩田龍彦氏にインタビュー調査を行った。J-Green堺の施設は天然芝・人工芝フィールドはサッカーだけでなくラグビーやラクロスの大会や事業にも利用されており、スポーツ交流拠点の形成という設立目的を実現していた。施設の利用状況としては年間の来場者数が約60万人、開催試合数が約9000試合であり、各カテゴリー日本代表合宿や全国規模のリーグや大会等の事業に数多く利用されている。このように多くの人々に利用されるコミュニティであるからこそ、フィールドパートナーとして様々な企業がスポンサードするインセンティブがあり、プロサッカークラブマネジメントにも大変参考になる事例である。また、J-GREEN堺は大阪府や堺市、日本サッカー協会や大阪府サッカー協会、指定管理者であるジェイズパークグループ等が協力して運営しており、その運営形態や組織形態は地域スポーツ施設のマネジメントの成功例として参考になるものであった。また、国内では堺の他に岐阜、仙台等で調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
目的達成度は2.5割程度である。国内外での情報収集や資料整理を行ったが、更に調査を続けていく必要がある。国内では大阪、岐阜、仙台等で情報収集を行った。大阪府堺市にてサッカーナショナルトレーニングセンターであるJ-GREEN堺の現地視察を行った。岐阜では、FC岐阜の自律型経営のための方策の検討を実施。岐阜県知事との会議、スポンサーであるセイノーホールディングス社長との会談、地元朝日大学の視察と学長等との懇談を行った。実務実情に即した情報収集が出来、ビジネスモデルの構築研究に非常に有用であった。また、仙台出張を行ない、楽天野球団の球団代表に球団経営についてのインタビュー調査を行なった。楽天野球団は球場の営業管理を球団自身で管理している。このような自律型の球団は日本プロ野球にはほとんど存在しておらず、楽天野球団は日本における自律型スポーツクラブの好例といえる。球団の方針として、野球界では軽視されがちなデータを、全ての部門で用いて決定している。組織体制としては、スタジアム部が存在し、コンセッションGp、興行企画Gp、施設管理Gp、ファン・エンターテイメントGpに分かれており、各々部門でスタジアムを管理している。海外では、パリ、ジュネーブ、ロンドン等で情報収集を目的とした会談を行った。また、資料整理により、研究の骨子となる部分の検討は果たされた。本年度は震災の影響も大きかったが、来年度以降は更に調査を積み重ね、研究の成果を徐々に纏めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
海外のサッカーリーグ、クラブの資料を収集し、海外の事例を調査する。成功事例の選定のために、人件費比率や人件費に対する勝ち点、全収入に占めるマッチデイ収入の割合などいくつかの指標を設定し、その指標を満たすクラブを抽出する。各国のサッカーリーグの収入を比較すると、最も収入規模が高く、他国リーグと比べてスポンサー収入、放映権料収入、入場料収入の3つのバランスが良く、安定した収入構造であるイングランドを中心に設定していく。これら各クラブの経営データや、リーグ構造などの資料を収集し、リーグ環境や地域性を踏まえた経営の特徴等について考察を行う。また、資料収集と成功クラブの選定を踏まえた上で、成功を収めているクラブ関係者にインタビュー調査を行う。この調査によって、それぞれのクラブの成功要因を精査し、それらのクラブのマネジメント手法を日本国内の事例と比較し、考察を行う。欧米のクラブが発展のため用いたマネジメント手法が、それぞれのクラブ内だけに適用可能な方式にとどまることなく、国内の事例においても普遍的なものであるのか検討することができる。具体的には、海外クラブの数々のマネジメント手法のうち、わが国においても応用可能な手法はあるのか検討する。また、日本スポーツ産業学会研究第22巻第1号に掲載された「Jリーグクラブにおけるユース出身選手に関する研究」は、自律型スポーツクラブの経営モデルの構築に大きな柱となる可能性があり、更に研究を深めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
科学的検証の基礎研究として、日本国内のみならず海外で発行された文献の入手が必要となる。また、イギリスなどへの実地調査のために旅費交通費が必要となる。統計的検証を行うため、Jリーグクラブの選手年俸支出の推移、成績の推移、観客数の推移など多くのデータ入力とそれらの統計的な整理が必要となる。従って、それに従事する学生アルバイトへの謝金が必要となる。欧米におけるスポーツクラブの成功要因の一連の研究によって、経営的視点に乏しかった従来型のスポーツクラブに代わって、これからの自立的なクラブ運営を目指す経営者、ならびにスポーツビジネス全般に携わる者にとって有益な視点が得られるのではないかと期待できる。そのため、得られた知見を広く公開するための、印刷製本費が必要となる。
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