本研究の目的は、スポーツ組織の地域密着のマネジメントのあり方を実証的に明らかにするために、住民が居住するコミュニティに対して構築する「センス・オブ・コミュニティ」と、スポーツチームやスポーツクラブを評価することによって構築する「レピュテーション(評判)」が、チームやクラブに対するロイヤルティにどのような影響を与えているのかについて明らかにすることであった。 まず、スポーツ観戦領域においてJリーグクラブの観戦者を対象に調査を行った結果、センス・オブ・コミュニティは、チームへの愛着やのめり込みを示すチーム・アイデンティティには直接影響を及ぼさず、チーム・レピュテーションが正の影響を及ぼすことが明らかになった。また、センス・オブ・コミュニティはチームレピュテーションを媒介してチーム・アイデンティティ高めることが示され、ファンによるチームへの愛着は、地元への愛着によって直接的にもたらされるのではなく、地元のチームを高く評価することによってもたらされるといった「内集団びいき」の傾向を示すことが明らかになった。この結果は、地域密着戦略を採用するプロスポーツクラブマネジメントに有効な示唆を与える。 一方、地域スポーツクラブ会員のクラブに対するロイヤルティは、クラブから得るものがあるならば所属しようとする「功利的」な側面やクラブに安定して所属していたいとする「安定的」な側面があることが確認された。スポーツ観戦領域と同様に地域への愛着ではなく、クラブへのレピュテーションがクラブへのロイヤルティに影響を及ぼすことが示唆されたが、地域愛着やレピュテーションの尺度を今後精緻化することが課題として示された。総合型地域スポーツクラブは、会員の「マイクラブ」としての愛着を高めることが求められるが、今回の調査の範囲ではクラブに所属することによってベネフィットを得たいとする受け身な姿勢であることが示された。
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