研究課題/領域番号 |
23500766
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研究機関 | 川崎医療福祉大学 |
研究代表者 |
田島 誠 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 准教授 (70330644)
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キーワード | 漸減要約フィードバック / 知覚-運動スキル学習 / 保持期間 / ストレス耐性 / ハーディネス |
研究概要 |
今年度の研究では、前年度に実施した実験データの分析を行い、漸減要約フィードバックの長期間の学習効果を検討した。大学生を即時フィードバック群と漸減要約フィードバック群にランダムに群分けし、運動学習課題として7メートルのブラインド・パッティング課題を設定した。その結果、漸減要約フィードバックの長期間の学習効果が認められた。 また、知覚-運動スキル学習における学習者のストレス耐性についても着目し、高い知覚-運動スキルを有するアスリートのストレス耐性について調査した。競技スポーツはアスリートにとって大きなストレッサーになっている。特に、アスリートが高い知覚-運動スキルを新たに学習する際には強いストレス状態にあるため、アスリートはストレスに対して強い耐性も必要であると考えられる。そのようなストレスに対して強い性格特性として、「ハーディネス」がある。そこで、大学生のハーディネスと運動習慣の関係を調査し、運動・スポーツをしていない大学生よりも日常的に運動・スポーツをしている(体育会系部活動やサークルに所属している)大学生の方が有意に高いハーディネス得点を示したことを明らかにした。 さらに、より高い競技レベルの国体強化指定ジュニアアスリートのハーディネスについても検討した。その結果、ある程度高いレベルで競技スポーツに取り組んでいるジュニアアスリートは、一般大学生よりもハーディネスが高いことが示され、より高度な知覚-運動スキルを有するアスリートはストレス耐性が高いことが見出された。この結果から、知覚-運動スキル学習とストレス耐性との間には関連性があることが示唆された。 高齢者に対してより効果的な知覚-運動スキル学習を明らかにしていく上で、今後は漸減要約フィードバックによる学習と学習者のストレス耐性、および年齢との関係を明らかにしていく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の進行状況は比較的順調に進んでおり、前年度までの遅れを取り戻すことができた。特に、「知覚-運動スキル学習とストレス耐性の関係」という新たな視点からの研究によって、本研究の目的の一つである高齢者の効果的な知覚-運動スキルのための方略に対して、より有効な示唆を得ることができた点が研究の進行状況を大きく進展させた要因である。
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今後の研究の推進方策 |
知覚-運動スキル学習とストレス耐性の関係を明らかにするために、学習者のハーディネスと調査する予定である。また、ストレス負荷課題として鏡映描写課題を学習者に実施させた際の前後のストレス反応(心理学的指標と行動学的指標、生理学的指標)を測定・分析することによって、学習者の学習過程への影響を検討する予定である。 以上の研究成果を学会等で研究発表する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は前年度までの遅れを取り戻すために、前年度までに得られた実験データの解析に加え、新たに生体反応測定装置を購入する予定であったが、データ解析から得られた結果が期待通りであり、かつ購入予定であった高額な生体反応測定装置ではなく、比較的安価な生体反応測定装置でも十分に対応可能であることが分かったため、予定していた金額を使用することができなかった。 平成23年度当初に予定していた実験計画に加え、新たに「ストレス耐性」の観点からの実験を実施する必要があるため、学習者に適切にストレス負荷を提示する実験器具(鏡映描写課題ソフト、PC、ヘッドマウントディスプレイ等)を新たに購入する予定である。 また、実験遂行およびデータ解析に対する人件費として、実験補助者に対して適正な謝金(\1,000/時間)を支払う予定である。 さらに、実験成果の発表として、複数の学会で研究発表を行うため、かつ研究論文作成のために最新の研究発表の成果を収集するため、旅費として使用する予定である。
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