研究概要 |
【目的】運動時の活動筋における酸素分圧は、安静時の10分の1に低下する。この低酸素刺激によって、様々な適応性変化が惹起される。本年度の研究は、持久的トレーニング初期段階における低酸素誘導因子(HIF)-1αとその標的遺伝子の発現動態、およびmicroRNAの関与を解明することを目的とした。 【方法】12週令のWistar系雌ラットを用い、運動群にはトレッドミル走行運動 (25m/min, 15-42min/day, 20% grade)を3,6,10日間負荷した。ヒラメ筋(SO)、腓腹筋の赤筋部位(Gr)、及び左心室(LV)のRNAを抽出し、RT-PCR法によりmRNAと microRNAの発現量を分析した。 【結果・考察】HIF-1αmRNAはSOで3日後、Grで3,10日後、LVで10日後に有意に増加した。血管内皮細胞増殖因子(VEGF)と転写因子PU.1のmRNAもこれとほぼ同様の変化を示した。HIFの分解酵素であるPHD2のmRNAはSOで6,10日後、GrとLVでは10日後に有意な増加がみられた。LVではmiR-20bが6,10日後に有意に減少していた。以上のことから、トレーニング初期段階において、HIF-1αとその標的遺伝子の発現が顕著に増加するとともに、PHD2によるHIF-1αタンパクの分解を促進するnegative feedbackが進行していることが示唆された。また、運動によるこれらの適応性応答には、PU.1の発現増加とmiR-20bの発現抑制が関与する可能性が示唆された。
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