研究課題/領域番号 |
23500771
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研究機関 | 宮城教育大学 |
研究代表者 |
前田 順一 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (40199617)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 血管拡張機構 / 経壁圧変化 / 血管圧縮変形 / ラット骨格筋 |
研究概要 |
本研究は、運動開始直後1秒程度で生ずる非常に速い血管拡張機構について、機械的な刺激変換 (mechano-transduction)機構を中心に血管平滑筋に固有な筋原性血管応答から検討することを目的としている。2011 年度はラットのヒラメ筋の入り口に位置する供給動脈 (feeding artery)の生体外摘出標本を作成し、血管外壁に圧力変化を負荷する微小血管外壁プレッシャーコントレールシステムにより惹起される血管拡張の閾値について定量的に明らかにした。 血管内圧を 80 mmHg に保ちながら 1秒の250 mmHgの矩形様血管外圧を1秒間の間隔で1~10回負荷したところ、1回(1秒間)の負荷直後に無加圧時の血管径の5~10 %の血管拡張が生じた。負荷回数を増すとともに血管拡張は増大し、5~6回(5~6 秒間)の負荷で無負荷時の20 ~ 50 % の血管拡張が生じた。外圧の負荷回数をさらに増加させても血管拡張には影響しなかった。また、5秒間の250 mmHg の矩形様外圧を1回負荷した時の血管拡張は、1秒間の250 mmHgの矩形外圧を5 回繰り返した時よりも有意に低値を示し、血管外圧負荷による血管拡張は、外圧の負荷時間よりも負荷頻度に依存することが明らかになった。負荷する血管外圧を 20 mmHg から徐々に漸増したところ、血管外圧により血管内径が減少しはじめる60 mmHg 付近から負荷直後に5 ~ 7 % の血管拡張が生じ、200 mmHg 前後で10%の血管拡張が生じた。また、この血管拡張は血管内皮細胞を傷害することで著しく減少したが、拡張反応が消えることはなかった。 以上の結果より、直径100 μm 前後の供給動脈において、血管を変形させる60 mmHg 程度の血管外圧を短時間(1秒)負荷することにより、負荷直後に血管拡張が生ずることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初はラットのヒラメ筋のみではなく、腓腹筋への供給動脈についても機械的な血管圧縮にともなう血管拡張の刺激閾値を検討する予定であった。しかし、圧力コントロールシステム等の納期の遅れや、東日本大震災後の実験施設・設備の再整備等に期日を要したために腓腹筋の供給動脈の標本数が確保できず、筋種差にともなう血管の部位差を検討することができなかった。2012年度前半に腓腹筋の供給動脈での実験を追加実施しする予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の充分な標本数を確保することができなかった、腓腹筋の供給動脈について早急にデータを追加するとともに、2012年度の実験計画通り、本年度明らかにした血管外圧の上昇にともなう血管の拡張を惹起する圧力変化の閾値と閾値の部位差に及ぼす自発走運動の影響を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
圧力コントロールシステム等の納期の遅れや、東日本大震災後の実験施設・設備の再整備等に期日を要したために本年度に予定していた実験日数が確保できなかったことから、腓腹筋について標本数を満たすことができなかった。本年度に実施することができなかった腓腹筋の供給動脈での実験を2012年度前半に追加実施する予定であり、この追加実験にともなうラットや薬品等の消耗品の購入に次年度の研究費を充てる。
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