脳梗塞などの脳虚血障害後の早期回復を目的に、運動療法により血管幹細胞を活性化させ、脳内の毛細血管に動員できるかどうかの基礎的研究を遂行した。成体の骨髄キメラマウスで片側内頸動脈を一過性に閉塞させる脳虚血障害モデルを作製した。さらにトレッドミルによる運動負荷モデルを作製した。その結果、骨髄由来内皮幹細胞の動態について以下のことが判明した。1)脳血液脳関門に骨髄由来内皮細胞と骨髄由来樹状細胞が動員されている。2) 狭窄部内頸動脈近傍に骨髄由来内皮細胞と骨髄由来樹状細胞、さらに骨髄由来平滑筋細胞が動員されている。3)心筋内毛細血管に多数の骨髄由来内皮細胞がみられる。全身諸臓器で最も多い。4)腎臓毛細血管にも比較的多数の骨髄由来内皮細胞がみられる。5) 全身諸臓器の動脈、静脈、リンパ管に骨髄由来内皮細胞がみられる。6) 上行大動脈起始部と大動脈弁に骨髄由来内皮細胞がみられ、また大動脈全体に多数の骨髄由来樹状突起細胞がみられる。以上、骨髄由来内皮幹細胞動態と全身諸臓器の循環動態との密接な関連が示唆された。しかし、運動療法による骨髄由来血管幹細胞の脳血流改善効果を証明するまでには至らなかった。その原因として、脳内の血管に元来存在する内皮幹細胞の動態にも着目する必要があり、今後研究を進める予定である。
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