研究概要 |
オートファジー (自食)経路の機能不全が、加齢性筋肉減弱症に関与している可能性がある。今年度は自発性走運動が骨格筋のオートファジー関連物質、およびその調節因子 (mTOR: mammalian target of rapamycin, FOXO3: Forkhead box O3)の発現量に影響を及ぼすかどうかについて調べた。 実験動物には18ヶ月齢のC57Black雄マウスを用い、その半分を通常ケージで飼育し、残りを自発回転運動ケージで飼育した。6ヶ月の運動後、両群の大腿四頭筋を摘出し、生化学的解析および形態学的解析を行なった。6ヶ月の自発運動により、体重あたりの筋重量は有意に増加した。活性化型mTORおよび不活性型 (リン酸化)FOXO3は、運動により有意に増加する傾向にあった。しかしながら、p62/SQSTM1、Beclin-1の骨格筋内蛋白量に運動の影響は認められなかった。また蛍光免疫組織化学による検証でも、これらの物質の組織内分布様相に明らかな傾向は認められなかった。 以上のことから、6ヶ月の自発性運動によりオートファジー経路の上流因子 (mTOR, FOXO3)は調節を受けるものの、オートファジー関連物質への影響はほとんどみられない可能性がある。したがって単純な走運動だけでは、加齢筋におけるオートファジー機能不全を解消できないと思われる。
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