研究課題/領域番号 |
23500784
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研究機関 | 北翔大学 |
研究代表者 |
沖田 孝一 北翔大学, 公私立大学の部局等, 教授 (80382539)
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研究分担者 |
絹川 真太郎 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60399871)
横田 卓 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), その他 (90374321)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | レジスタンス・トレーニング / 血流制限 / 筋肥大 / 脳性神経栄養因子 / ミオカイン |
研究概要 |
血流制限により筋負荷を増強するレジスタンス・トレーニング法に関する研究を発展させ、以下の課題を明らかにした。1)プロトコールの最適化:先行研究にて本トレーニング法による筋負荷を増強させるには、血流制限圧ではなく、運動強度の増加が有効であることを明らかにしたが、強度の増加では、従来の高強度負荷を用いたトレーニングと同様のリスクが生じてくる可能性があった。今回の検討では、血流制限により筋負荷の回復が妨げられる点に着目し、極めて低強度の負荷でも繰り返し回数が多ければ、負荷が蓄積し高強度負荷と同等の効果が得られることを証明できた。2)個体差要因の分析:本トレーニング法における効果の統計学的に有意な性差は認められなかった。競技者特性については、持久系選手において、瞬発系選手より血流制限による筋負荷増強効果が大きくなることが明らかになった。心不全患者においては、本来血流が低下しているためか血流制限の効果は、健常者と比較し小さかったが、臨床にて推奨されている通常のレジスタンス・トレーニングの強度より低い強度で同様の効果が得られる可能性が明らかになった。年齢および耐糖能異常の影響については一定の傾向が見られていない。これらの知見は、ガイドラインを作成する上で重要な情報となる。3)ミオカインの意義の探求:運動による健康増進効果の背景にあると考えられる脳性神経栄養因子(BDNF)について、断面調査にて諸因子との関連を検討し、年齢に最も強く関連することが明らかになった。また動物モデルを用いての基礎研究を開始し、BDNF投与により運動能力が向上すること、摂食が抑制されることが明らかになってきた。これらの知見は、BDNFが治療薬としての可能性を持つことを意味する。4)研究手技の妥当性の検証:筋へのトレーニング負荷を、筋内代謝における化学的ストレスとして評価する方法を検証し国際学術雑誌で投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画が全体的に順調に進んでいるのは、これまでの基盤があったのが大きな理由である。また基礎実験を含めて有益な結果が複数得られており、予想以上に多くの国内外学会にて評価され発表の機会を与えられた。また現時点で国際論文への掲載も見込まれている。具体的達成度は次の通りである。(1)プロトコールの最適化に関する検討:本トレーニング法による筋負荷を増強させるには、負荷量の増加および繰り返し回数の増加が有効であることを証明できた。(2)個体差要因の分析:性差、年齢差、競技者特性差、さらに心不全の有無、耐糖能異常の有無における差について検討を続けており、一定の見解が得られている。(3)ミオカインの意義の探求:ミオカインの一つである脳性神経栄養因子について、中高年者および若年者約240名における断面的調査を行い、諸因子との関連など基礎的検討を行うことができた。また動物モデルを用いての基礎研究を開始し、顕著な成果を得ている。(4)ガイドライン作成:前述の知見を基に本トレーニング法のガイドラインを作成中である。(5)若年者への応用:19~21才までの被験者10名においてジャンプスクワット・トレーニングに血流制限を応用した介入研究(1ヶ月)を行うことができた。(6)研究手技の有効性の検証:筋へのトレーニング負荷を、筋内代謝における化学的ストレスとして評価する方法の有用性を学術的に検証できたので国際学術雑誌に投稿中である(under revising)。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果の論文化と平行して、ガイドラインの作成に必要な個体差要因の分析のための追加実験および臨床応用に関する検討を継続していく予定である。特にジャンプスクワット・トレーニングへの応用では、有用な結果が得られなかったので方法を見直す必要がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
学会発表、論文掲載に関わる費用、脳性神経栄養因子などの血液生化学的測定に要する費用、MR装置使用諸費、被験者および実験協力者への謝礼などへの使用が予定されている。
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