研究課題/領域番号 |
23500787
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
古川 覚 東洋大学, ライフデザイン学部, 准教授 (50307675)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ニトロ化タンパク質 |
研究概要 |
本研究は、運動トレーニングによる安静時血圧の改善をニトロ化タンパク質に着目した生化学的な側面と、血管の弛緩能力の測定による組織学的な側面から大動脈を検討しようとするものである。ヒトを対象にした研究は勿論のこと高血圧モデルを用いた研究においても類似の研究は皆無であり、運動トレーニングによって導かれる安静時血圧改善のメカニズムを究明する上で非常に重要な知見となり得るものと考えられる。とりわけ、活性酸素による動脈の変性と、運動トレーニングがその変性を阻止する可能性を示すことは、本研究の学術的な特色でもある。本研究による結果は、今後の高血圧運動療法に大きく貢献するのと同時に、高血圧予防のための運動トレーニングにも様々な示唆を与えるものと思われる。 平成23年度は、次年度以降行うタンパク質の定量実験に備えて、組織のホモジェネート方法およびホモジェネートにより得られる懸濁液の分画方法の確立を行った。ホモジェネート時に利用する緩衝液の検討、ホモジェネート時に緩衝液の温度上昇を防ぐ方法を検討した。また、ホモジェネートにより得られた懸濁液の分画では、Yoshidaらの研究(Biochim.Biophys.Act 1996)の方法を改良し、核を含む1,000×g顆粒(P1)、ミトコンドリア、小胞体および原形質膜を含む1000,000×g顆粒(P1)、サイトゾルを含む1000,000×g上清(S)に分画することが可能となった。 これらの分画により、次年度以降の生化学分析がスムーズに行えるようになるものと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
組織のホモジェネート方法およびホモジェネートにより得られる懸濁液の分画方法を確立させ、ホモジェネート時に利用する緩衝液の検討、ホモジェネート時に緩衝液の温度上昇を防ぐ方法の検討に時間を要した。また、ホモジェネートにより得られた懸濁液の分画方法の検討では、核を含む1,000×g顆粒(P1)、ミトコンドリア、小胞体および原形質膜を含む1000,000×g顆粒(P1)、サイトゾルを含む1000,000×g上清(S)に分画するためにかなりの時間を要することがわかった。 これまでの達成度は、やや遅れてはいるものの、ウェスタンブロット方法の精度が上がり、次年度以降の生化学分析がスムーズに行えるようになるものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進に大きな変更は無いが、当初は自作することを考えていた血管運動測定装置を購入することとし、研究を推進してゆきたい。血管運動測定装置は内皮依存血管弛緩機能および物理的弾性を調査するため必要である。組織量の少ない大動脈においてこれらの調査を行うためには高感度の分析技術が求められるため、装置の購入は研究推進と精度の確立に寄与する。本研究においては、生化学的分析に、血管運動に関する結果を加えることに意味がある。 これらの大動脈の解析は、高血圧の予防・改善を検討する際に大いに貢献するものと思われる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、内皮依存血管弛緩機能および物理的弾性を調査するために必要不可欠な「ワイヤーミオグラフ410A(血管運動測定装置)」の購入を目的に、平成23年度予算の繰り越し及び平成25年度予算の前倒し請求を行う予定である。 そして、検討してきた懸濁液からのタンパク質の定量を進める計画である。 また、加えて、胸部大動脈を摘出し内皮依存血管弛緩機能、および物理的弾性を調査する方法を検討する。摘出した胸部大動脈から約2mmのリングを作成し固定装置にマウントする。その後胸部大動脈を-10 、-8、-6、-4log mol/lのアセチルコリンに暴露する。また同様の暴露を、NO合成酵素阻害薬である NG-nitro-L-arginine methyl ester (L-NAME) 存在下、および、直接血管平滑筋を弛緩させ昇圧効果を発揮する sodium nitroprusside (SNP) 存在下においても行い、内皮依存血管弛緩機能を検査する方法を検討したい。
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