研究課題/領域番号 |
23500789
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研究機関 | 至学館大学 |
研究代表者 |
村上 太郎 至学館大学, 健康科学部, 教授 (10252305)
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研究分担者 |
石黒 奈穂子 至学館大学, 健康科学部, 助手 (10617260)
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キーワード | REDD1 / mTORC1 / 筋肉 / レジスタンス運動 / 持久運動 / たんぱく質合成 |
研究概要 |
運動の様式に関わらず、運動中に骨格筋のたんぱく質合成は低下し、運動後増大すると考えられているが、そのメカニズムは十分には明らかにされていない。mTORC1は4EBP1等をリン酸化し、たんぱく質合成を翻訳段階で調節する主要因子である。mTORC1を不活性化し、たんぱく質合成を低下させる伝達因子の一つとしてREDD1が同定されている。昨年度までの実験によって、持久運動中に筋肉のたんぱく質合成が抑制される機序のひとつにREDD1が関与すること、また、運動後に栄養を摂取しなかった場合、運動後もREDD1の発現増大が継続し筋肉たんぱく質合成の低下は暫く続くことを見出してきた。そこで、今年度は筋肥大を誘導するようなレジスタンス運動モデルにおいてもREDD1の発現が誘導されるか否か、また、それと連動してmTORC1経路が不活性するか否かについて検討した。その結果、preliminaryなデータではあるが、筋肥大を誘導するような電気刺激による筋収縮によって、腓腹筋と足底筋のREDD1の発現は低下する可能性が示唆された。反対に、4EBP1のリン酸化は電気刺激によって増大する可能性が示唆された。これらの結果は、運動中に筋たんぱく質合成が低下する機序と運動後にたんぱく質合成が高まる機序は、それぞれ、持久運動とレジスタンス運動では異なる可能性を示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、運動前や運動後の栄養状態の違いが運動によるREDD1の発現やmTORC1経路の活性化に及ぼす影響を検討する予定でいたが、電気刺激による筋の収縮モデルの構築に時間を要し、漸く運動前後の栄養が空腹の状態での検討がはじまったところである。現在、実験のための環境が整ったため、今後は安定して結果を出すことが可能である。
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今後の研究の推進方策 |
筋肥大を誘導するようなレジスタンス運動によってREDD1の発現が増大するか否か、また、それに連動してmTORC1の発現が変動するか否かを明らかにする。加えて、運動前後の栄養状態がレジスタンス運動によるREDD1の発現やmTORC1経路の活性化に影響を及ぼすか否かについても合わせて検討する。上記のように、当初予定に比べて達成度が“やや遅れている”状況にあるが、既に電気刺激による筋収縮モデルが安定的に動き始め、あとはデータを蓄積してゆく段階にあるため、一定程度の成果が得られる見込みである。また、本研究をとおして、持久運動やレジスタンス運動による筋たんぱく質の代謝回転の変動にアミノ酸輸送体の発現が増減すること、筋肉の不動化によって栄養素(ロイシン)刺激による筋肉のたんぱく質合成反応が低減すること、さらに、筋肉にかかる張力とロイシン刺激による筋たんぱく質合成反応との間には関係があることなど、新たな研究の展開にむけての兆しが得られた。計画の最終年度にあたり、上記の萌芽を発展させることにも力を注ぎたい。具体的な実験の推進策としては、これまでどおり、大学院生の修論研究および学部生の卒業研究と当該研究課題を連動させ、研究室一丸となって研究の推進に取り組む。
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次年度の研究費の使用計画 |
一昨年度に生化学分析の分析方法を検討した結果、感度良くたんぱく質発現を定量することが可能になったため、抗体等の使用量を低減させることできるようになった。その結果、物件費の予算が節約できることにより、わずなながら来年度に研究費を繰り越すことが可能になった。申請当初より、本研究の実施には研究費が不足していたため(特に2年目および3年目)、今年度の実験をより充実させることができる。
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