研究概要 |
本研究は,健診受診者26,469人が参加した循環器疾患に関連した大規模コホート研究である岩手県北地域コホート研究(県北コホート)を基礎資料として,肥満,身体活動量,日常生活動作(ADL)および体力が将来の要介護状態等にどのような影響を及ぼすのかを解析することを目的とする。更に,岩手県北部山間部地域は肥満者の高度集積地域であり,肥満および身体活動量が将来の介護認定にどのような影響を及ぼしているのかについて解析を行う。 本年度は,なぜ岩手県北部山間部地域に肥満者が集積するかについて,地理的条件(特に標高)とBMIおよび運動習慣との関連を検討した。既存の県北コホートデータベースにコホート対象者居住地の字単位地理的データベースをリンケージし,岩手県北地域コホート研究で定める匿名化手順を実施したデータセットを用いて解析を行った。 その結果,居住地標高の四分位別(Q1:1-19m, Q2:20-106m, Q3:107-200m, Q4:202-800m)で比較すると,男性では標高が高いほど年齢が若く,逆に女性では標高が高いほど年齢が高かったが,運動習慣ありの者(週2回以上,1回30分以上,1年以上,運動をしている者)の割合は男女とも標高が高いほど低くなる傾向が認められた。男性では標高が高いほど,BMI,ヘモグロビンA1cが低く,HDLコレステロールが高い傾向が認められた。一方女性では,標高が高いほど,BMI,収縮時血圧が高く,総コレステロールが低い傾向が認められた。 男性と女性で結果が異なることについては今後さらに解析をすすめ必要があるが,女性において居住地の標高が運動習慣および肥満に関連していることが示唆された。
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