研究課題/領域番号 |
23500792
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
上埜 高志 東北大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (60176617)
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研究分担者 |
安保 英勇 東北大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (50250650)
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キーワード | 学校 / メンタルヘルス / 援助要請 / 統合失調症 / うつ病 / PTSD |
研究概要 |
1.質問紙調査 全国の高等学校の担任教師1,000名(回収率35.2%)、養護教諭1,000名(同34.9%)を対象としてメンタルヘルスに関する質問紙調査を郵送により実施した。その結果、教職員は、統合失調症およびうつ病の症状について、専門家の援助を必要とする問題であると認識できていたものの、統合失調症ビネット(模擬症例)の病名特定の正答率において担任教師(うつ病46%; 統合失調症17%)と養護教諭(うつ病51%; 統合失調症68%)とでは差がみられた。原因については、大部分の教職員が心理的要因を原因と捉えていた。養護教諭はそれに加えて、生物学的要因を原因と捉えていた者が多く、担任教師は甘えや親の育て方といった自己責任的な要素を原因と捉えていた。また担任教師は、統合失調症ビネットの中の被害関係念慮の記述から、原因を友達づきあいの苦手さに帰属させていることが示唆された。さらに、病名を特定することができないと、原因の認識ができず、セルフケアについての考え方に悪い影響を与えることが示唆された。対処については、大部分の教職員が学内での対処に積極的で、外部機関の紹介には慎重であり、まずはスクールカウンセラーから適切な判断を仰ごうとすることが示唆された。また、保護者との連携、学内での対処は担任教師が主体的に動いていることがうかがわれた。学校におけメンタルヘルスリテラシーの実情の一端を明らかにすることができた。 2.インタビュー調査 高等学校(首都圏)の担当教師2名および養護教諭1名を対象にインタビュー調査し学校におけるメンタルヘルスに関する理解等の実態を聴取した。現在、その分析をおこなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年3月11日に発生した東日本大震災のため、本研究科も復旧・復興のため、さらに被災地・被災者への支援もあり、研究教育等の通常業務を実施することが大幅に遅れた。その後、教育の通常業務については遅れを取戻しているが、研究については、まだ完全には遅れが回復していない。 平成24年度、研究遂行についてはおおよそ1年遅れであるが、担任教師1,000名(回収率35.2%)および養護教諭1,000名(同34.9%)を対象として質問紙調査を実施することができた。一定の成果が得られた。また、少数ではあるが、高等学校(首都圏)の担任教師(2名)および養護教諭(1名)にたいしてインタビュー調査を実施した。現在、分析中である。
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今後の研究の推進方策 |
学校におけるメンタルヘルスリテラシーについて、その実情を知るために、中学校・高等学校それぞれ1,000名程度の生徒を対象として、宮城県・仙台市を中心に統合失調症およびうつ病のビネット(模擬症例)を基にした質問紙調査を実施する。さらに、メンタルヘルスリテラシーについて、インビュー調査のための訪問調査(宮城県・仙台市)を実施する。 あわせて、保護者(1,000名程度)についても、学校に関するメンタルヘルスリテラシーについて質問紙調査およびインタビュー調査を実施する。 生徒および保護者のいずれについても、インターネットによる調査も実施する予定である。 いっぽう、被災地・被災者支援の実践およびその他の多くの情報から、学校におけるメンタルヘルス普及の重要性が指摘された。したがって、通常時のメンタルヘルスのほか、災害・事故等の緊急時のメンタルヘルスについても追加して調査研究する方向で検討する。学校におけるメンタルヘルス・リテラシーの調査対象学校は中学校・高等学校を予定していたが、必要に応じて小学校・幼稚園などを追加すること、また調査対象者としては養護教諭・生徒・保護者を予定していたが、一般教諭、地域住民なども追加することを検討する。また、質問紙調査において提示する予定のビネット(模擬症例)は、当初、統合失調症・うつ病であったが、その他にPSTD(心的外傷後ストレス障害)、不安障害、睡眠障害なども追加することを検討する。インタビュー調査についても、災害・事故等の緊急時のメンタルヘルスについても追加することを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年3月の東日本大震災のため調査研究に遅れはあるが、次年度は最終年度であるので、集中的に調査研究を実施する。 中学校・高等学校それぞれ1,000名程度の生徒を対象として宮城県・仙台市を中心に、質問紙調査を郵送により実施する。そのための質問紙調査の印刷費・郵送費等を要する。また、インビュー調査のための出張(宮城県・仙台市)を実施するので、交通費を要する。 あわせて、保護者についても質問紙調査およびインタビュー調査を実施する。そのための印刷費・郵送費・交通費等を要する。 生徒および保護者のいずれの場合も、質問紙調査については、インターネットによる調査も並行して実施する。そのための調査費を要する。 データが大量となるため、多くの学生アルバイトによるデータ入力・解析をおこなう。
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