研究課題/領域番号 |
23500793
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
宮崎 章夫 茨城大学, 人文学部, 准教授 (90312769)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 高齢ドライバー / リスク回避行動 |
研究概要 |
3年計画の初年度である本年度は、先行研究のレビュー、ならびに自由記述式質問紙を用いた探索的研究を行った。本研究では、幅広いタイプのリスク回避行動を収集・分類することを目的として、リスク回避行動を敢えて広い意味で捉え、いわゆる「慎重な運転者」が示しやすい運転行動と定義した。その結果、慎重な運転には、適応的行動と不適応的行動と呼べるような2つのタイプが存在することが明らかになった。適応的行動は、ドライバーが自分の運転技能・運転能力の衰えを自覚し、運転方法を変更することにより衰えを補おうとする補償的運転である。補償的運転は、さらに「余裕を持った運転計画を立てる」「雨の日の運転を控える」など運転前に実施するタイプと、「スピードを出さない運転をする」「他のクルマに車線を譲る」など運転中に実施するタイプに大別される。これらの運転は、高い計画性や慎重な意思決定により支えられており、その多くは交通事故に遭遇するリスクを低減する働きを持つと考えられた。一方、不適応的行動は、「非常にゆっくりと左折して、対向車に急ブレーキをふまれる」、「後ろのクルマが気になって、前方への注意がおろそかになり、前のクルマにぶつかりそうになる」など、ドライバーが経験する脅威・不安により引き起こされる性質を持つ。こうした運転は、慎重でありすぎるがゆえに周囲の交通状況への配慮を欠いており、交通事故のリスクを高める場合があると考えられた。慎重な運転をしようとする動機が強い高齢ドライバーの事故を防止するためには、適応的行動を増やすだけではなく、不適応的行動を減らすことが重要な課題となると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究計画は、先行研究のレビューと探索的研究を行い、来年度以降に実施する調査に向けた問題設定と作業仮説の生成を行うことであった。これらの課題は、本年度において概ね計画通り達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に生成した仮説を定量的に検証するための心理尺度を作成し、高齢ドライバーならびに、その比較のため若者ドライバーを対象にした質問紙調査を実施する。調査結果の分析を行い、得られた結果に基づき、高齢ドライバーのリスク回避行動を促進する心理学的モデルを生成する。
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次年度の研究費の使用計画 |
震災・原発事故の影響により、常磐線の一部が不通のままであり、東北地方から研究協力者を招へいする際には、諸規定により特急を利用することができなくなった。その分の旅費が余り、来年度に繰り越される。来年度、研究協力者との打ち合わせを行う際の旅費に充てる予定である。
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