研究課題/領域番号 |
23500793
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
宮崎 章夫 茨城大学, 人文学部, 准教授 (90312769)
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キーワード | 高齢ドライバー / リスク回避行動 / 精神的負担感 / 事故防止 |
研究概要 |
計画2年目に当たる本年度は、今後に予定している大規模調査に向けた探索的研究をおこなった。安全運転教育の研究・実践領域では、高齢ドライバーは自分の運転能力の低下を自覚し(老性自覚)、それを補償するためにリスク回避行動をとることが期待されている。しかしながら、このモデルはドライバーを理性的な存在と捉えすぎている面もあり、合理的人間観に基づくモデルが現実のドライバーの姿にどこまで合致するのかは明らかにされていない。 以上の問題意識から2つの調査目的を設定した。第1に、高齢ドライバーが実施しているリスク回避行動の実体を把握すること、第2にリスク回避行動をドライバーに動機づける要因を明らかにすることである。調査は定量的質問紙調査と定性的面接調査の2部構成とした。調査対象者は宮城県、茨城県、栃木県在住の高齢ドライバー58 名であった。 質問紙調査の結果、老性自覚とリスク回避行動との間に強い対応関係は認められなかった。その原因のひとつとして、老性自覚があってもリスク回避行動を積極的にはおこなわないドライバーの存在が確認された。 こうしたドライバー3名を抽出し、リスク回避行動をとらない理由を明らかにするために面接調査を行った。3名に共通していた特徴として、日常的に運転範囲を自宅周囲に限定していた。それにより運転中の精神的負担感が軽減されるため、積極的にリスク回避行動をとる必要性を感じていないことがわかった。 2つの調査より、リスク回避行動を動機づける心理的要因として精神的負担感が重要であることが示唆された。今後は精神的負担感を多面的に捉え、それとリスク回避行動との関連性を検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、本年度に予備調査と本調査までを実施する予定であった。予備調査は計画通りに実施し、その結果を分析することを通して、本調査での仮説生成までを順調に行うことはできた。しかしながら本調査では、当初に予定していたシルバー人材センターのみでは十分な数の高齢ドライバーを集めることが困難であることが明らかになった。そこで、新たに調査コンサルティング会社を介して対象者を募っている。予定していた数の対象者を確保できる見通しは立った為、来年度に早急に本調査を実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
実施が1年遅れている本調査を行う。必要十分な数の対象者を確保する為、調査コンサルティング会社を介して調査を実施する予定である。得られた結果を分析し、高齢ドライバーのリスク回避行動を説明する心理学的モデルを構築する。また、そのモデルに基づきリスク回避行動の促進を目的とした安全教育の方法を考案する。安全運転教育は、可能であれば来年度に実施する予定であるが、本調査が予定よりも遅れていることから、それが現実的に困難となる可能性もある。その場合は計画を1年延長し、再来年度に安全教育の試行をおこなう。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度に実施する予定であった本調査の研究費が残っている。来年度、この予算を使って、調査コンサルティング会社を介して調査を実施する。また、研究成果の公表にも予算の一部を使用する。あわせて、調査結果の分析に必要なソフトウェア等の購入も予定している。
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