研究課題/領域番号 |
23500794
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
内田 千代子 茨城大学, 保健管理センター, 准教授 (80312776)
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研究分担者 |
高橋 由光 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40450598)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 大学生 / 自殺 / ピアサポート / ポストベンション / 遺された人 |
研究概要 |
大学生においては、10年以上前から自殺が死因の一位を占めている。大学生の自殺予防を促進することは焦眉の急を要する課題である。家族や友人の死で苦しむ"遺された人"も相当数に上ると考えられる。SOS(signs ofsuicide)自殺予防プログラムを基盤にしつつ、"遺された人"のポストベンションに留意したプログラムで自殺予防教育を施行すること、および、友人の自殺の危険に気づいて支援できるピアサポーターとしての関わりのできる若者を養成して自殺者を減らす結果に導くことが本研究の目的である。 研究代表者の所属する大学において、研究に使うことを説明し同意を得た学生に対して自己記入式質問紙調査を行った。大学生の自殺念慮、および自殺に関する知識、考え方、行動について実態を把握し、大学生の中に"遺された人"がどの程度存在するのか、そうでない人との比較を試みた。また、希望者に面接を行った。質問紙調査では、身近な人の自殺経験がない学生のほうが、そうでない学生"遺された人"よりも故人の話題を避けようとする傾向が強かったが、遺された人"の間柄の近さによっても異なると考え、その点に注目して面接を行い、間柄の近さによる群の比較を試みた。これらをポストベンション強化の自殺予防プログラム作成の参考にした。 自殺予防教育レクチャー1では、自殺の危険と援助希求行動の重要性について、レクチャー2ではポストベンションとピアサポートについて、傾聴すること、他者とかかわることについて、レクチャー3では、特にPTSDについて教育した。レクチャーの前後、および2カ月後に、自殺についての知識が身に着いたか、友人の危険に気づいて適切な援助を勧めることでの自己効力感を得られたか、ピアサポーティブに接することを理解しているかについての自己記入式質問紙調査を行い、教育効果の判定の一助とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全体として順調な達成度といえる。東日本大震災の影響により授業回数が減ったため、通常授業を自殺予防教育に振り替えることは困難となり、予定したほどの多数を対象とした調査、およびレクチャーは行えなかったが、調査とレクチャーの内容を充実させたこと、自殺予防教育シリーズとしてのレクチャーの回数を予定より増やしたこと、ピアサポート養成を(希望者でなく)予防教育参加者全員としたことなどにより、より多くの知見を得られた。面接者についても、面接回数の多いケースも含まれ、研究は進んだといえる。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者の所属する大学において、学生に対してH23 と同様に自己記入式質問紙調査を行う。面接希望者にも同様に行う。授業時間を使って、H23で得られた知見を反映させたプログラムのレクチャーを行い、レクチャーの前後および2-3カ月後に質問紙調査を行う。レクチャーを行ってないクラスで質問紙調査を行い両群の比較をして予防教育による意識、行動の変化を検討する。 研究代表者は福島大学に異動した。この地域では、東日本大震災により"遺された人"を配慮したポストベンションがまさに必要とされている。ピアサポートの在り方も、自助グループ的色彩がより濃くなる。狭い意味での自殺予防にとらわれずに、広くトラウマのケアを対象とする方向で進めていくことを考えている。 また、今回の震災で、釜石の小中学校での津波防災教育の効果が実証された。予防教育の有効性、重要性が高まったため、他大学、あるいは中学高校での実施の可能性もあり得る。
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次年度の研究費の使用計画 |
H24年度には、H23年度と同様の自己記入式質問紙調査、面接希望者への面接、ポストベンションに配慮した自殺予防教育、ピアサポート的力をもつ学生の養成を試行する。調査結果の集計分析のためにコンピュータおよびソフトウエアを必要とし、事務補佐員の人件費も要する。国際会議での発表や交流のための旅費や参考図書も必要である。PTSD治療を含めてのポストベンションとピアサポートの先進的実施施設での研修も必要である。研究分担者協力者との打ち合わせや会議も予定している。研究費をそのように使用することを計画している。
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