研究課題/領域番号 |
23500797
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
岩田 英樹 金沢大学, 人間科学系, 教授 (60322111)
|
キーワード | 喫煙・薬物乱用防止教育 |
研究概要 |
本年度は,①我が国における青少年の誘いを断る戦略に関する実態把握のための調査研究,および②すでに米国等で有効性が評価されている教育プログラムの内容分析と,日本での応用に向けた検討をそれぞれ実施した。 前者では,中・高校生約5,466名を対象として飲酒や喫煙に関する行動状況と関連する要因との関係について検討を行った。その結果,近年報告されている先行知見と同様,飲酒や喫煙に関わる行動自体は,その割合が低く留まっていた。また,直接的に友達などから誘われた経験の有無や,それが行動の出現に影響を与えていること,自ら周囲の状況を受け入れ自分自身から行動を引き起こしていると思われる傾向も伺える結果がみられた。 後者では,米国でも広く実践・実証されている健康教育プログラムの中から「Keepin’it REAL」と「All Stars」を対象とし,それぞれの教員用指導マニュアル及び教材などを入手可能な範囲で手配した。その結果,それらのプログラムでは,実際に青少年が喫煙や飲酒などの望まない行動をすすめられたりした場合に対処できることを目指して,規範意識を高める教育内容が組み込まれていた。それらの特徴としては,①社会科学の方法を通して,規範が「規範」となる過程について丁寧に学びつつ,②自分も他者もそれ(規範)に従って行動していることを確認し,③望ましくない/偏った主観的規範への客観的なデータによる検証を通して誤った規範を是正するとともに,④クラス集団で望ましい規範を遵守し合うように繰り返し想起させたりしているところ,などがあげられた。 以上,実態把握調査の結果と,米国での先駆的な実践例の分析を踏まえて,日本で実践可能な健康教育プログラムの開発に向けて,有志の学校教員とともに検討会を開始した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度に実施を計画していた実態把握調査と,米国の健康教育プログラムの分析については計画通りに実施できた。しかし,その成果を踏まえて日本で実践可能な健康教育プログラムの開発に向けて,有志の学校教員とともに検討会を開催したところ,予想を超えて参加した教員から「指導の要点がつかみにくい」「生徒の実態との接点が見出し辛い」などといった反応がみられた。したがって,順調であれば,モデルとなる実験授業の先行実施とその評価を予定していたが,その段階にまでは至らなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度には,日本で実践可能な健康教育プログラムの開発に向けて,実際に指導に当たる学校教員を含めた検討会を丁寧に開催し,モデルとなる実験授業案を作成し,その効果の程度を評価する。また,これまでに実施した実態把握調査の結果や,米国の健康教育プログラムの分析結果などから得られた知見については,分析・整理する作業を進めて積極的に学術雑誌への投稿を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
|