最終年度は,①米国の教育プログラムの分析を踏まえ,我が国の中学生用の教育プログラムの教材検討,②実験授業の実施及び改善に向けた検討会を学校教員の協力のもとに実施した。①では,協力の得られた学校教員と共に検討を行った結果,保護者を直接対象とした働きかけをそのままわが国で適用することは困難が多いが,生徒を対象として家庭での規範を考えさせるような教材については,小・中・高用の指導案を試作することができた。そして,②実験授業を小学校2校,中・高校各1校で実施し,事前事後評価を行った。授業の内容に対する児童生徒の反応について授業中のワークシートへの記述内容や生徒の発言等をまとめると,小学生に比して中・高校生と学年が上がるほど学習のねらいを理解できているように推察された。また,質問紙を用いた事前事後の評価では設定した指標において,わずかながら良好な成績がみられた。 研究期間全体を通して実施した研究の成果としては,中・高校生が飲酒や喫煙に誘われた際の断るスキルを高めようとする場合,その場面における即時的な対応能力を高めるだけではなく,それまでの生活経験等で助長された誤った規範意識の是正や,保護者との連携による規範意識の育成も視野に入れた包括的なプログラムが重要であることが明らかとなった。それは,初年度のインタビュー調査で必ずしも周囲からの誘いによって喫煙を開始したとは思えない喫煙者がいたことや,米国などで断るスキルのみの教育プログラムでは成績が乏しく,規範意識の育成も視野に入れた教育プログラムの開発がみられたこと,また,2年目に実施した調査で,直接的な誘いと共に友達や保護者などに対する誤った規範意識等も飲酒や喫煙行動に影響していたこと,等からも明らかと考える。なお,指導案を試作することができたが,より効果の高いものへの改善が今後の課題と言える。
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