研究課題/領域番号 |
23500801
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
小倉 俊郎 岡山大学, 保健管理センター, 教授 (80214097)
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キーワード | 潜在性甲状腺機能異常 / 甲状腺乳頭がん |
研究概要 |
平成24年度は,当大学新入生健康診断受診者のうち承諾を得た者を対象にして、一般血液検査に加えて、一次スクリーニングとして甲状腺関連血液検査(TSH,抗マイクロゾーム抗体:MCHA)を行った。その際に,両者いずれかの検査値異常を呈した学生324名,およびコントロールとして検値正常者100名に対して,二次検査として,甲状腺ホルモン(fT3,fT4)および甲状腺自己抗体(サイロイドテスト:TGHA,TSH受容体抗体:TRAb)の検査を行った。この結果,TSHの異常者は男子7.2%,女子8.2%に認め,MCHAの陽性者は男子1.9%に比較して女子は5.1%と高率に認められた。 また,二次検査を行った学生においてTSHとfT4は負の相関を示したが,この年代での甲状腺ホルモンは高値例が多く,fT4低値は1例も認めなかった。潜在性甲状腺機能低下症と考えられる学生は,男子1.3%,女子3.0%に認められ,比較的少数であった。また,TRAb陽性者は男子には認めず,女子で2名(1.4%)に認め,新規および再発のバセドウ病であった。 この研究で事後措置として呼び出しを行った学生で,135名に甲状腺超音波検査を行ったが,そのうち3名に甲状腺乳頭がんが新たに発見され,3名ともに手術を行い,経過は順調である。 以上より,当初の目的である (1)潜在性甲状腺機能低下症の頻度 (2)顕性、潜在性自己免疫性甲状腺疾患の頻度 (3)甲状腺US所見と慢性甲状腺炎(自己抗体陽性)との関連 (4)潜在性甲状腺機能亢進症の頻度 (5)潜在性甲状腺機能亢進症における自己抗体(TRAb)検出頻度 などの結果が明らかになりつつある。我が国の甲状腺臨床研究において、重要な基礎的情報提供とともに,被験者にとっても健康管理に有益な情報をもたらすことができたと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画である対象者は,2307名と予想どおりの数が確保できた。大学新入生の内,甲状腺自己抗体保有率は前述したとおり,男子1.9%,女子5.1%と確認でき,さらに性差があることを明らかにした。TSHの異常を呈した学生が7~8%に認められたが,性差はなく,さらに低値例が多いことが明らかになった。二時検査の導入数も324名と,ほぼ計画通りの数が確保できた。この症例の中でTSHとfT4の逆相関も確認でき,今後の分析で潜在性甲状腺機能異常の頻度も明らかにできると考える。TRAbの陽性率は,男子149名中0名(0%)であり,女子は146名中2名(1.4%)であり,これらはBasedow病のこの年代の頻度を知る上で,重要な情報になった。またMCHAとTSHの関連については,男子では明らかではなかったが,女子ではMCHA陽性者は陰性者に比較してTSHが有意に高値であり,潜在性甲状腺機能低下が潜行している可能性が示唆された。よって,今回の研究の計画はほぼ順調に遂行できていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
現在までのデータを,現在も事後措置としてデーターが増えていく可能性があり,それらをもとにさらに詳細に解析していく予定。特に,甲状腺の超音波所見の解析もさらに勧めていく。今後は研究発表と情報収集をおこないつつ論文化の方向で研究を進めていく予定。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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