研究課題/領域番号 |
23500809
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
今井 佐恵子 大阪府立大学, 総合リハビリテーション学部, 教授 (00438235)
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研究分担者 |
福井 道明 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30247829)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | 食事療法 / 糖尿病 / 栄養指導 / 食後高血糖 / 血糖変動 |
研究実績の概要 |
糖尿病患者とその予備軍は、健常者と比べ、動脈硬化が進みやすく虚血性心疾患や脳血管障害のリスクが3倍高まると報告されている。脳卒中、心筋梗塞を発症すると、その後遺症のため、患者のQOLは著しく低下し、医療費、介護費を増大させる要因となる。食後高血糖を抑制する経口血糖降下薬など薬物療法の効果は明白であるが、生活習慣の基本となる食事療法が遵守できていないと、血糖降下作用は次第に減弱する。私達は、患者が実践しやすい食事療法として、野菜を毎食最初に、炭水化物を最後に摂取する独自の食事療法と血糖コントロール、ホルモンの動態について調べている。 本研究は激増する糖尿病の重症化予防、特に動脈硬化進展予防を目的とし、外来2型糖尿病患者を対象に、食品の摂取順序によって食後血糖値の上昇を抑え、1日の血糖変動を抑制する「食べる順番療法」を実施し、5年間の動脈硬化進展に及ぼす影響を調べている。 2型糖尿病患者を対象に、持続血糖測定器(CGM)を装着させ、食品の摂取順序を変えて血糖の変動をクロスオーバーにより測定した。炭水化物を先に摂取した日と野菜を先に摂取した日の食後血糖値および血糖変動を比較すると、野菜を先に摂取した日の食後血糖値および血糖変動は有意に抑制された。すなわち、同じエネルギー量、同じ糖質量を摂取しても、野菜など食物繊維を多く含む食品を最初に摂取し、炭水化物を最後に摂取することで血糖上昇を抑制でき、血糖の日内変動を抑えることができた。この効果は健常者においても確認されたことから、糖尿病発症予防に対する効果も期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
短期の研究として、2型糖尿病患者を対象に持続血糖測定器(CGM)を装着させ、食品の摂取順序を変えて血糖の変動をクロスオーバーにより測定した。炭水化物を先に摂取した日と野菜を先に摂取した日の食後血糖値および血糖変動を比較すると、野菜を先に摂取した日の食後血糖値および血糖変動は有意に抑制された。 また、間食の摂取時間の違いと血糖の日内変動に与える影響についても、2型糖尿病患者を対象にクロスオーバー法により実施した。結果は間食をとる場合、昼食後に摂取するよりも昼食と夕食の間に分割して摂取するほうが血糖変動が抑えられることを確認した。これらの成果は国際学会3回、国内学会1回において発表し、総説論文を2報発表した。また医療関係者対象の招待講演を多数実施した。
長期の研究として、野菜を最初に摂取する食事療法を4から5年間継続した場合の、合併症、特に動脈硬化進展に及ぼす影響を調査するため、頚動脈エコー検査のデータを収集している。
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今後の研究の推進方策 |
食品の摂取順序による長期間(4から5年間)の動脈硬化に及ぼす影響を調べるため、頚動脈内膜中膜複合体肥厚(IMT)を検査中である。食事介入前後および対照群と比較検討し、食事療法による動脈硬化進展の長期的影響について検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は、短期研究の成果が得られ、海外学会発表を3回実施したため、参加費、旅費、宿泊費が当初の計画より大幅に多くなった。したがって平成27年度の予算を前倒しして使用した。人件費、謝金については当該大学からの研究費等で補填した。その結果として端数の残金が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は長期的な食事療法の効果を検証するため、頚動脈内膜中膜複合体肥厚度のデータを収集し、必要な場合は診療内で追加の検査を実施する。主にデータ収集の人件費等が必要になるため、その費用に充てることにする。
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