研究概要 |
近年、若年女性のやせ願望は社会現象になりつつあり、過剰なやせを健康な状態であるという誤った体型認識が広まりつつある。このような社会現象を背景として今回我々は、199名の若年女性(19.2±0.5才)を対象として、BMI および体脂肪率を測定し、対象者を「正常」、「低体重体脂肪正常」、やせすぎである「るい痩」の3群に分類し、各群における日常生活習慣および潜在的な健康障害の有無を検討した。全対象者のうち「るい痩」者は23名 (11.6%)であった。日常生活習慣において「るい痩」者は、朝食および運動習慣を有する者が少なく、喫煙率が高いなどの傾向が認められた。潜在的な健康障害を評価する上で、生活習慣病因子として、収縮期および拡張期血圧, LDL-コレステロール、中性脂肪、HDL-コレステロール、空腹時血糖値を測定した。炎症マーカーとしてhs-CRP、MCP-1、IL-6を測定した。さらに, 総および高分子量アディポネクチンを測定した。その他の検査項目として、血管障害はFMDによる血管内皮機能測定、骨障害はDXA法による骨密度測定により評価を行った。生活習慣病因子、炎症マーカー、血管内皮機能、骨密度は3群において有意な差異は認められなかった。アディポネクチン血中濃度の検討では、「正常」、「低体重体脂肪正常」、「るい痩」群の総および高分子量アディポネクチン濃度はそれぞれ、13.2±3.4, 11.3±3.8, 7.1±3.9 (μg/dL)、4.0±2.0, 3.9±3.1, 2.0±0.9 (μg/dL)であり「るい痩」群は「正常」群と比較して有意に低値であった。経年的な検討においてもこの結果は同様であった。 アディポネクチン低値は心血管疾患、糖尿病、子宮内膜症などの婦人科疾患の発症を促進する危険因子の1つであり、若年女性における「るい痩」者は留意すべき体型であることが示唆された。
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