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2013 年度 実施状況報告書

精神科リハビリテーションにおけるスポーツ活動の有効性-生理的ストレス反応の評価-

研究課題

研究課題/領域番号 23500815
研究機関順天堂大学

研究代表者

中村 恭子  順天堂大学, スポーツ健康科学部, 准教授 (90365560)

研究分担者 広沢 正孝  順天堂大学, スポーツ健康科学部, 教授 (60218831)
細見 修  順天堂大学, スポーツ健康科学部, 教授 (30134274)
山倉 文幸  順天堂大学, 医療看護学部, 教授 (20053358)
鈴木 利人  順天堂大学, 医学部, 教授 (10196850)
キーワード心身の健康 / 精神科リハビリテーション / スポーツ活動 / ダンス活動 / 生理的ストレス反応 / 唾液アミラーゼ / クロモグラニンA / コルチゾール
研究概要

【目的】精神科リハビリテーションにおけるスポーツ活動について、心理面、体力面に及ぼす効果に加えて、唾液を用いた生理的ストレス反応から比較し、効果的な運動特性を検討することを目的とする。
【方法】精神科リハビリテーションとして実施可能な各種運動の前後で生理的、心理的、体力的効果を測定し比較した。運動実験は、23年度は精神科デイケアプログラムで実施しているダンス活動30分、24・25年度は同等の運動強度で異なる運動条件の4種目①自由なテンポでの歩行、②126BPMのメトロノームに合わせた歩行、③126BPMの音楽に合わせた歩行、④③の音楽に合わせた歩行動作による集団でのダンスを各20分間実施し比較した。効果測定は、生理的ストレス反応として唾液中のαアミラーゼ(身体的ストレスに反応)、クロモグラニンA(急性心理的ストレスに反応)、コルチゾール(慢性心理的ストレスに反応)の濃度検査、心理テストとしてMCL-S2、STAI、体力面では心拍計および加速度計を用いて運動強度を測定するほか体力テストを実施した。なお、一般成人を対照群として同様の運動実験を実施して効果を比較し、患者群の反応の特徴を見た。
【結果】患者群、一般成人群ともに運動後に快感情やリラックス感が増加し、クロモグラニンAやコルチゾール値が減少したことから、中等度強度の歩行運動は両者にとって精神的ストレス軽減効果を期待できることが示唆された。特に一般成人群ではダンス歩行は他の運動よりリラックス感が向上しやすく、状態不安が減少しやすいことが確認され、クロモグラニンA値の有意な減少が認められた。患者群は一般成人群よりも心理不安得点が高いとともにαアミラーゼやクロモグラニンA値が高く、心理的にも生理的にもストレス反応が強いことが確認された。患者群は体力レベルが低いため、一般成人群で有効な中等度強度の運動が身体的なストレスになる可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

23年度は精神科デイケアプログラムとして実施しているダンス活動の総合的内容(ストレッチ、フォークダンス、リズムダンス)を運動実験として効果測定を実施したところ、患者群・一般成人群ともに心理的には改善傾向が見られたものの、生理的ストレス反応においては精神的ストレスに反応するとされるクロモグラニンAの有意な変化を確認できなかった。
そこで、24年度の研究では一般成人を対象とし、中等度の運動強度である歩行動作を中心に条件の異なる4種類の運動(自由歩行、メトロノーム歩行、音楽歩行、ダンス)を設定し、心理的・生理的ストレス反応を検討した。また、生理的ストレス反応指標としてコルチゾールについても測定を試みた。その結果、ダンス後に快感情、リラックス感が有意に向上し、不安感が有意に減少して、4種目中で最も気分改善効果が認められた。生理的ストレス反応では、4種類の運動すべてにおいて運動後に唾液中のコルチゾール濃度が有意に減少した。しかし、不安感とコルチゾール濃度との相関関係が認められたのはダンスのみであり、また、ダンス後にはクロモグラニンA濃度の減少傾向が認められたことから、ダンスはストレス軽減効果が高いことが示唆された。
25年度は、患者群を対象として24年度と同様の運動実験を実施し、各種運動の効果および一般成人群との反応の違いを検討した。患者群においても歩行動作を中心とした中等度強度の運動は心理的・生理的ストレス軽減効果が認められた。特に音楽歩行後にクロモグラニンA値が有意に減少した。一方、患者群は一般成人群と比較してαアミラーゼ値の運動後の増加率が高く、歩行運動による身体的疲労が影響していると考えられた。体力測定の結果から患者群は体力レベルが低いことが明らかになっており、体力レベルに合った運動強度について検討する必要性が示唆された。
これらの結果から、一定の研究成果を得られたと考えている。

今後の研究の推進方策

25年度までの研究において、精神疾患患者群は一般成人群と比較して、心理テストの不安得点が高いとともにαアミラーゼやクロモグラニンA値が高く、心理的にも生理的にもストレス反応が強いことが確認された。また、患者群は体力レベルが低いため、中等度強度の運動が身体的なストレスになる可能性が示唆された。
そこで、25年度は運動強度の異なる運動実験を実施し、運動前後のストレス反応の違いを検討する。運動実験は精神科リハビリテーションとして実施可能な運動内容とする。低強度運動としてはフェルデンクライス・メソッドATM、やや高強度の運動としてはエアロビックダンス等を予定している。また、同様の運動実験を一般成人群にも実施して患者群と比較し、精神疾患患者群のリハビリテーションに有効な運動特性を明らかにしていく。

次年度の研究費の使用計画

25年度は唾液検体の検査費用の割引等があり、予算よりも少ない支出で済んだため、余剰額が生じた。余剰額を不要な支出に充てるよりも、次年度の研究に充当するため繰り越すこととしたため、次年度使用額が生じた。
次年度使用額は、患者群・一般成人群を対象とした運動実験の生理的ストレス反応検査費(唾液検体の分析委託費用)に充てる。当初の計画より多くの被験者を対象として実験を実施し、実験結果の精度を高める計画である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて その他

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] 歩行運動時におけるBGMや他者との交流の有無が心理的・生理的ストレス反応に及ぼす影響

    • 著者名/発表者名
      中村恭子、廣澤正孝、細見修、山倉文幸、鈴木利人
    • 学会等名
      第68回日本体力医学会大会
    • 発表場所
      学術総合センター(東京)
  • [学会発表] 精神科リハビリテーションとしてのスポーツ活動の有効性―歩行運動時におけるBGMや他者との交流の有無が心理的・生理的ストレス反応に及ぼす影響―

    • 著者名/発表者名
      中村恭子、廣澤正孝、細見修、山倉文幸、鈴木利人、輪島留美子、久保田陵一、吉田理恵
    • 学会等名
      第56回日本病院・地域精神医学会総会
    • 発表場所
      かでる2・7 北海道立道民活動センター(札幌)

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公開日: 2015-05-28  

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