研究課題/領域番号 |
23500820
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研究機関 | 昭和音楽大学 |
研究代表者 |
久保田 牧子 昭和音楽大学, 音楽学部, 准教授 (50329314)
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研究分担者 |
北島 正人 秋田大学, 教育文化学部, 講師 (30407910)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 音楽療法 / 疾患群 / 心身の健康 / 臨床実践モデル / 地域性 |
研究概要 |
音楽療法研究の基礎的調査として、平成23年度に開催された国内外の音楽療法学術大会の発表抄録からそれぞれの動向を分析した。国際大会では実験研究/シングル・システム研究が最多であったが、国内大会では活動/事例報告が口頭57%、ポスター70%と半数以上を占めた。国内大会では臨床研究、対象は障害児に関する研究が最多であった。国際大会における口頭発表は記述的研究/質的研究や方法論・新技法の提案が多数を占め、実験的研究と同様に質的研究の手法が広く用いられる傾向がみられた。平成23年度は、地域実践研究としてICF((国際生活機能分類モデル)を用いて音楽療法における音楽活動の高齢者の心身の健康への作用について、高齢者グループへの音楽療法の効果を検討した。高齢者25名(平均年齢85.3歳)を対象に3ヵ月間、7回の音楽療法、前半は楽器表現(A)と折り紙作り(B)の2グループを設け、後半には両グループに歌唱、歌詞創作活動を行った。結果、グループAは、前半セッション後に高齢者うつ尺度(GDS)の得点が有意に低下し、グループBは、後半セッション後に生活満足度得点の有意な減少、収縮期血圧の有意な増加が認められた。表情カード(7種)による気分評定では、A「楽しい・愉快」45.7%、B「ニコニコ・快適」49%が最大値で、歌詞創作活動後は「楽しい・愉快」がAが71.4%、Bが48.9%となり、Aは大幅に増加した。楽器活動による抑うつ感の低下は、気分表現とあわせ、個別の静的な折り紙活動よりも集団での音楽療法により能動的な楽しさが創出されたことによる。後半の歌詞創作活動では、主体的な創作の取組みによる作品の内容分析から、情緒的な内的活動の活性化が推測され、音楽活動が後期高齢者の参加意欲、心身機能の促進、活動への関心を高め、ICFに示される健康促進の良循環に寄与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
心身の健康に寄与する音楽療法の実践モデル研究の1年目として、後期高齢者を対象とした音楽療法研究セッションを2クールまで実施し、継続的な研究セッションが設定できた。その他、医療領域における疾患別の音楽療法セッションのグループの手配が完了し、平成24年度に実施する就学前の子どもを対象とした音楽療法研究セッションのグループ設定が完了し、プレ研究を開始している。音楽療法実践モデルの研究セッションの対象および実施の設定が整ったことで、研究2年目の実践研究の取り組みの見通しが立っていることは、研究目的に設定した「対象に応じた実践プログラムの検討」および「音要素を基盤とする音楽および音楽療法の心身への効能に関する調査研究」を推進することができる。
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今後の研究の推進方策 |
音楽療法実践モデルの研究セッションの対象および実施の設定が整った領域が、医療、子どもと研究1年目より拡大し、高齢者に関しては、継続して研究セッションの2年目の実施が可能となり、実践モデルの策定および音楽療法を実施する実務者の養成が展開できる段階にある。臨床実践および調査グループの形成のために、疾患を抱える対象者の音楽療法実施に向けて患者グループや臨床現場が確保でき、研究セッションの2年目の実施施設では、現場の介護スタッフのアセスメント・トレーニングに取り組む準備ができた段階である。平成24年度研究実施計画として以下の3項目を挙げている。1.音楽療法実施プログラムの作成および音楽療法スタッフの養成 2.継続的集団音楽療法における効果測定 3.音楽療法の効果測定の指標の開発これらの研究実施および平成23年度研究実施計画に掲げた音楽の心身についての基礎的研究として、大学生へのリスニングの音楽療法研究セッションを実施して、質問紙による効果測定を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
音楽療法実践モデルの研究対象および実施施設の協力を当初計画を短縮して実現することができたことから、「継続的集団音楽療法における効果測定」に関する音楽療法実践研究の拡充として、研究協力者および音楽療法セッションの実務者を増員することが必要であり、これに関する経費に重きを置く見通しである。その他、生理指標としての血圧計などの機器の複数台購入が必要である。
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