研究課題/領域番号 |
23500826
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
竹内 実 京都産業大学, 総合生命科学部, 教授 (70257773)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 副流煙 / 肺胞マクロファージ / 遺伝子損傷 / 染色体異常 |
研究概要 |
受動喫煙による健康への影響は重要な社会問題である。しかし、受動喫煙による実験科学的な研究は非常に少ない。特に、受動喫煙はタバコ主流煙ではなくいわゆる副流煙(環境タバコ煙)を喫煙者でない非喫煙者が吸入するため、喫煙者ではなく子供などの非喫煙者までにも肺への影響がある。特に、肺は呼吸により様々な微生物や粒子が吸入されるため、感染を起こしやすい臓器でもある。そのため、肺には病原性微生物からの感染防御を担っている免疫系がある。特に、肺の免疫系において重要な役割をしている免疫細胞として肺胞マクロファージが肺に常在している。しかし、受動喫煙による肺胞マクロファージの染色体異常、遺伝子損傷への影響に焦点を絞った研究は、均一で一定量の受動喫煙をさすことが出来ないこともあり、国内、国外ともにされていない。そこで、今年度は、受動喫煙・タバコ副流煙自動喫煙設備を作成し、モニターNo.6リファレンスタバコのタバコ1本分の副流煙中に含まれる粒子数は、直径0.1μmの粒子434,421±90,467×104個/m3(mean±S.D.)、副流煙濃度は、57.8±6.3mg/m3(mean±S.D.)でマウスに吸入させ、末梢血中のCOHb濃度は34.4±2.2%、気管支肺胞洗浄により得られた肺胞マクロファージのDot plot解析値より、、マウスがタバコ副流煙を一定量、一定濃度で均一に吸入させる系を確立した。この一定で均一な濃度の副流煙を受動喫煙させたマウスの肺胞マクロファージ、肺上皮組織および全肺組織から高純度のDNAが抽出出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2011年度に東北震災などによる基金助成金の金額確定および入金の遅延に伴い、予定していた研究計画の遂行がずれ込み、計画の変更を強いられたため、やや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策は、平成23年度に受動喫煙させたマウスの肺胞マクロファージ、肺組織から抽出して得られたDNAを用いて、平成24年度は以下の実験を行い、受動喫煙による染色体異常を評価する。1.5週齢マウスから脾臓を摘出し、金属メッシュ内で脾臓をハサミで細切後、滅菌ガーゼで濾過し、RPMI1640で混和後、遠心洗浄を2回行い、脾臓細胞を調製する。2. 調製した脾臓細胞をConAとLPSで刺激培養後、コルセミド溶液を加え、低張液処理後、細胞をカルノア液で固定し、M期の染色体標本をスライドグラスに火炎固定する。1.で作製した染色体標本をギムザ染色とDAPI染色により、染色体が伸展した標本を選別し染色体標本スライドを作成する。3. 受動喫煙マウスの肺胞マクロファージ、肺上皮組織から抽出したDNAを濃縮し、DNAaseにより酵素処理を行い、DNAが300-3000bpに断片化する。断片かしたDNAをニックトランスレーション法によりTexas Redで標識し、プローブを作製する。同様に非喫煙マウスの肺胞マクロファージ、肺組織から抽出したDNAを300-3000bpに断片化する。4. 染色体標本に、非喫煙、受動喫煙マウスの作成した標識したDNAプローブをハイブリダイズさせ、各染色体の遺伝子プローブを用意したスライドにも同様にハイブリダイズさせ、蛍光顕微鏡下でCCDカメラを使用して、染色体映像を取り込み保存する。
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次年度の研究費の使用計画 |
受動喫煙による肺胞マクロファージの染色体異常、遺伝子損傷への影響について研究を行うための平成24年度の研究費の使用計画は、平成24年度800000円と平成23年度の繰越金1674089円を加えて、課題を遂行するための平成24年度の研究費は2470000円で、その内訳は、実験費用として物品費:免疫試薬、一般試薬、ピッペットなど実験試薬・器具類などの消耗品1070000円、調査費、国内学会および国際学会参加予定のための学会参加旅費900000円、実験補助のためのアルバイトなどの人件費・謝金500000円を計画している。
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