研究課題/領域番号 |
23500826
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
竹内 実 京都産業大学, 総合生命科学部, 教授 (70257773)
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キーワード | 受動喫煙 / 副流煙 / 肺胞マクロファージ / 染色体異常 / 遺伝子損傷 / CGHマイクロアレイ / 活性酸素 / 副流煙粒子 |
研究概要 |
受動喫煙による健康への影響は重要な社会問題である。しかし、受動喫煙による実験科学的な研究は非常に少ない。特に、受動喫煙はタバコ主流煙ではなくいわゆる副流煙(環境タバコ煙)を喫煙者でない非喫煙者が吸入するため、喫煙者ではなく子供などの非喫煙者までにも肺への影響がある。特に、肺は呼吸により様々な微生物や粒子が吸入されるため、感染を起こしやすい臓器でもある。そのため、肺には病原性微生物からの感染防御を担っている免疫系がある。特に、肺の免疫系において重要な役割をしている免疫細胞として肺胞マクロファージが肺に常在している。しかし、受動喫煙による肺胞マクロファージの染色体異常、遺伝子損傷への影響に焦点を絞った研究は、均一で一定量の受動喫煙をさすことが出来ないこともあり、国内、国外ともにされていない。そこで、今年度は、昨年度確立した受動喫煙・タバコ副流煙自動喫煙設備を用い、一定濃度の副流煙57.8±6.3mg/m3(mean±S.D.)を10日間マウスに吸入させ、1日後に気管支肺胞洗浄により肺胞マクロファージを採取し、DNAを抽出後、増幅し蛍光標識後、CGHマイクロアレイにハイブリダイゼーションし、洗浄後、スキャニングし数値化した。得られたデータの品質確認後、問題ないことから解析を行った。ゲノム上に展開した後、平均化し有意に増幅した部位、欠損した部位を各染色体ごとに同定したところ、増幅した部位として116箇所、欠損した部位169箇所が検出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2011年度に東北震災などによる基金助成金の金額確定および入金の遅延に伴い、予定していた研究計画の遂行がずれ込み、計画の変更を強いられたため、やや遅れていたが、今年度はその遅れをほぼ取り返せた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策は、平成24年度に受動喫煙させたマウスの肺胞マクロファージから抽出して得られたDNAを用いて受動喫煙により影響を受けた染色体上での増幅と欠損部位が同定されたので、平成25年度は以下の実験を行い、受動喫煙による染色体異常について評価する。 1.平成24年度に得られた受動喫煙により影響を受けたCGHデータの増幅した部位、欠損した部位を同定するため、アルゴリズムにかける。アルゴリズムにかけた肺胞マクロファージのデータをゲノム全体について検出する。 2.平成24年度で得られた、受動喫煙で影響を受けたゲノム全体の増幅した変動部位116箇所について解析を行い、異常の認められた染色体を同定する。 3.平成24年度で得られた、受動喫煙で影響を受けたゲノム全体の欠損した変動部位169箇所について解析し、異常の認められた染色体を同定する。 4.異常が同定された増幅した染色体部位を同定後、異常が同定された欠損した染色体部位を同定する。次に同定された増幅した染色体部位から受動喫煙により影響を受けた遺伝子を同定し、さらに同定された欠損した染色体部位から受動喫煙により影響を受けた遺伝子を同定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
受動喫煙による肺胞マクロファージの染色体異常、遺伝子損傷への影響について研究を行うための平成25年度の研究費の使用計画は、平成25年度の500000円と平成24年度の繰越金1540000円を加えて、課題を遂行するための平成25年度の研究費は2040000円で、その内訳は、実験費用として物品費:免疫試薬、一般試薬、ピッペットなど実験試薬・器具類などの消耗品540000円、調査費、国内学会および国際学会参加予定のための学会参加旅費400000円を計画している。繰越金により、25年度は実験を多く行うことが出来るため、その人件費と研究成果が出ているので国際学会の発表に使用する予定である。なお、繰越金が生じた理由は、24年度はデータ解析を行う際に、解析ソフトが無料でダウンロード出来たこととこのソフトにより解析が可能であったため、費用がかからず、繰越金1540000円が生じた。
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