研究概要 |
受動喫煙による健康への影響は重要な社会問題である。しかし、受動喫煙による実験科学的な研究は非常に少ない。特に、受動喫煙はタバコ主流煙ではなくいわゆる副流煙(環境タバコ煙)を喫煙者でない非喫煙者が吸入するため、喫煙者ではなく子供などの非喫煙者までにも肺への影響がある。特に、肺は呼吸により様々な微生物や粒子が吸入されるため、感染を起こしやすい臓器でもある。そのため、肺には病原性微生物からの感染防御を担っている免疫系がある。特に、肺の免疫系において重要な役割をしている免疫細胞として肺胞マクロファージが肺に常在している。しかし、受動喫煙による肺胞マクロファージの染色体異常、遺伝子損傷への影響に焦点を絞った研究は、均一で一定量の受動喫煙をさすことが出来ないこともあり、国内、国外ともにされていない。そこで、今年度は、昨昨年度に引き続き、確立した受動喫煙・タバコ副流煙自動喫煙設備を用い、一定濃度の副流煙57.8±6.3mg/m3(mean±S.D.)を10日間マウスに均一で一定量吸入させ、1日後に気管支肺胞洗浄により肺胞マクロファージを採取し、DNAを抽出後、増幅し蛍光標識後、CGHマイクロアレイにハイブリダイゼーションし、洗浄後、スキャニングし数値化した。有意に増幅した部位い、欠損した部位を各染色体ごとに同定したところ、増幅した部位として116箇所、欠損した部位169箇所が検出された。このデータをもとに、変動幅が大きかった上位10箇所のゲノム部位を抽出した。その結果、有意に増幅したゲノム部位は、chr8のqE1,chrXのqF2,chr6のqG1, chr17のqA3であった。逆に有意に欠損したゲノム部位は、chr3のqE3、qC、chr5のqC3.1、chr13のqB3、chr16のqB3であった。
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