肥満の形成には生活習慣の乱れや遺伝子が関与する.既に肥満関連遺伝子に関しては、B3AR、B2ARやUCP1が報告され、その遺伝子多型の変異によって基礎代謝量が異なることが知られているが、メタ解析の結果、肥満関連遺伝子と肥満との間には強い関連性がないことが報告され一致した見解が得られていない.さらに内臓脂肪面積(VFA)と肥満関連遺伝子との関連性についての報告は未だにない.内臓脂肪は生活習慣病の発症の基盤であるため、肥満関連遺伝子との関連性を明らかにすることは、肥満発症の成因を探る上で重要である.本研究は生活習慣である環境要因と遺伝的要因が内臓脂肪の蓄積にどのように関わっているか検討した. 最終年度の被験者は男性29名、女性61名である.3年間の合計人数は男性81名、女性186名の計267名(20歳~72歳)である.測定項目は臍高部のX線CT画像によるVFA、形態計測値、血糖、血清脂質、血圧、3種類の肥満関連遺伝子である.遺伝子多型はワイルド型、ヘテロ型とホモ型に分類した.アンケートは生活習慣、食習慣及び運動習慣である.また、受診者には結果説明時に健康教育を行い、半年後に生活習慣の変容に関するアンケートを実施した. 3種類の遺伝子多型の頻度は既報とほぼ一致した.3遺伝子の多型別にVFAの平均値を比較した結果、有意差は認められなかった.さらに各遺伝子の多型を高代謝と低代謝に分類し、それらの重責とVFAとの関係について解析した場合にも顕著な関連性は見られなかった.併せて、VFAに影響力を示す年齢、運動習慣、歩行量で調整しVFAの多寡について分析を行ったが有意差は見られなかった.一方、男性のVFAにおいて運動習慣との間に有意差が確認され、運動の実施がVFAの減少に強い影響を及ぼすことが示唆された.しかし、半年後の生活習慣については肥満者、非肥満者とも生活習慣の変容は見られなかった.
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