研究課題/領域番号 |
23500838
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
新井 秀明 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (60313160)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | サーチュイン / FOXO / SMP30 / 長寿 |
研究概要 |
加齢は多くの疾患への罹患率を増加させるので、実年齢とは別に、生体の老化度を反映する指標があれば多くの加齢性の疾患の早期発見に有用である。加齢指標タンパク質30は肝臓で多く発現されているタンパク質であるが、ラットの加齢にともなって顕著に発現量が減少することが観察されている。したがってこのタンパク質は生体の老化度を反映する指標の有力な候補である。老化という現象は、ランダムな過程でなく多くの遺伝子により明確に規定されるシグナル伝達系により制御を受けることが最近の研究から明らかとなってきた。これらの老化制御系において、現在のところ極めて重要であると考えられているのはサーチュイン遺伝子とインスリン・IGFシグナリング系である。サーチュイン遺伝子が活性化することで、多くの重要な基質タンパク質が脱アセチル化を受けることで活性化されることが分かっている。サーチュインは老化制御のマスター遺伝子のひとつであり、インスリン・IGFシグナリング系との接点はFOXO転写因子である。研究代表者は平成23年度の研究から、ヒト肝ガン由来細胞株HepG2細胞を用いて加齢指標タンパク質30の発現と老化制御のシグナル伝達系との関係を検討した。本年度の研究から、この細胞ではレスベラトロールによってサーチュインを活性化すると加齢指標タンパク質30のタンパク質量が増加することが観察された。また、このタンパク質はインスリン刺激により減少することが観察された。したがって、加齢指標タンパク質30は老化制御の重要なシグナル系により制御を受けることが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞へのレスベラトロールによる刺激およびインスリンによる刺激、また、細胞内の加齢指標タンパク質30のタンパク質量の検出系の実験条件の確立と、最適化に時間・研究費を取られてしまった。しかしながら、23年度の研究からこの遺伝子の老化制御の主要シグナル伝達系との関係が明らかとなった。遺伝子発現の検討を始めることができなかったものの、タンパク質量の変化が比較的再現性が良く出せる結果であるため、遺伝子発現の検討に関しても結果が十分期待できると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、平成23年度に得られた加齢指標タンパク質30のタンパク質レベルの変化が遺伝子発現レベルの変化であることを検討する実験を行う。最初に、培養細胞内での加齢指標タンパク質30のmRNA量をリアルタイムPCRにより定量する実験系を確立する。次にこの系を用いて、レスベラトロールとインスリン刺激によりmRNA量に変化が見られるか否かを検討する。これまでに得られた結果からは、レスベラトロールによる加齢指標タンパク質30のタンパク質量の増加はFOXO1を介していることが推測されるため、FOXO1のsiRNAによる阻害時にレスベラトロールの効果が減弱するか否かをタンパク質・mRNA量の両方で検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
昨年度、前倒しで遺伝子解析試薬として30万円の前倒し請求を行った。しかしながら実際には研究が遺伝子解析まで進行しなかったため、205,574円の次年度使用額が生じた。したがって24年度は90万円強の研究費となる。この使用に関して、細胞培養の培地・消耗品に20万円使用する。リアルタイムPCRの試薬・消耗品に30万円使用する。siRNAと細胞への導入試薬に30万円使用する。ウエスタンブロットの試薬に10万円使用する。
|