研究概要 |
本研究の目的は、肥満高齢者を対象にノルディックウォーキング(以下、NWと略す)を活用した運動プログラムを考案し、これによる高分子量アディポネクチン(以下、HM-ADと略す)等の心血管病危険因子の改善度を、普通歩行(以下、RWと略す)を対照群としたランダム化比較試験により検討することである。 本研究の適格基準は、1)60歳以上70歳未満 2)BMI>25または腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上であり、研究の同意が得られた58名を研究対象とした。介入前測定の後、疫学研究者が全体をNW群28名とRW群30名にランダムに割付けた。介入期間は24週間であり、両群に対して1回当たり2時間のグループ運動を週1回の頻度で実施した。介入期間中、NW群で3名、RW群で4名が離脱したが、すべて持病の悪化や私事都合によるものであった。介入後測定を受けた51名(NW群25名、RW群26名)を対象に、介入前後におけるHM-AD等の変化を明らかにするためデータ解析を行った。 介入により両群の体重は有意に減少したが、減少率はNW群で有意に大きかった(NW:-4.2±0.5kg, RW:-2.8±0.4kg, p<0.05)。皮下脂肪及び内臓脂肪面積に関しても、介入により両群で有意に減少したが、内臓脂肪面積のみに有意な群間差が認められた(NW:-42.5±6.0cm2, RW:-22.6±6.9cm2, p<0.05)。インスリン抵抗性などの糖代謝指標は、介入によりNW群で有意に改善されたが、群間差は認められなかった。一方、HM-ADは、介入によりRW群で有意に増加したが、群間差は認められなかった(NW:0.29±0.16μg/mL, RW:0.64±0.21μg/mL)。 本研究により、肥満高齢者に対する心血管病危険因子改善のための運動療法として、NWプログラムの有用性が明らかになった。
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