研究課題/領域番号 |
23500840
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
宮井 信行 和歌山県立医科大学, 保健看護学部, 准教授 (40295811)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 運動負荷試験 / 中心動脈圧波 / 反射指数 / 血管内皮機能 / 動脈伸展性 / 動脈硬化 |
研究概要 |
本研究の目的は、運動負荷時の中心動脈圧波の応答を指標とする血管内皮機能評価法の有効性を検証することである。平成23度は、動脈硬化の危険因子の有無や集積による差違が最も顕在化する最適なプロトコールを決定するための検討を行った。検討1:健常な若年男性19名を対象に、自転車エルゴメーターによる運動負荷試験を種々の負荷条件(20%、40%、60%の固定負荷)で実施し、運動終了後から連続して動脈圧波形を記録した。検討2:脳心血管疾患の既往がない男性のうち、正常血圧で脂質異常や高血糖を認めない者(非リスク保有群14名)と、正常高値またはI度高血圧でかつ高血糖を合併する者(多重リスク保有群15名)を対象に、運動負荷試験における動脈圧波形の記録、身体計測、血液・尿検査、各種動脈硬化検査を実施した。その結果、(1)運動終了直後には、上腕および大動脈の収縮期圧が上昇したが、その上昇度は大動脈で有意に小さかった。(2)反射波の指標の脈圧比(上腕動脈と中心動脈の脈圧比)は運動前に比べて終了直後で有意に上昇し、その後も高値を維持した。また、その程度は負荷強度の条件に依存した。(3)多重リスク保有群では、非リスク保有群に比べて脈圧比が有意に低く、運動前よりも終了後で差が大きかった。(4)低強度よりも高強度の方が多重リスク保有群と非リスク保有群の差が顕著であり、血管壁硬化度の指標との関連もより強い傾向にあった。以上のことから、運動終了後の中心動脈圧波は、運動時の末梢血管の拡張反応を反映しており、その波形変化のパターンから血管の内皮機能障害や動脈伸展性の低下を捉えうる可能性があることが示唆された。また、このような血管拡張反応の低下を精度よく検出するためには、循環血流が充分に増大して動脈壁に相応のずり応力を働かせるような中等度以上の強度を設定することが適当であるものと推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の目的は、運動負荷時の中心動脈圧波の応答を指標とする血管内皮機能評価法を確立するにあたって、高血圧や脂質異常症、高血糖などの動脈硬化危険因子の有無や集積による動脈圧波形の差違が最も顕在化する検査条件を明らかにすることであった。そのために、当初の計画どおり、某企業の従業員で、研究への参加の同意の得られた中高年男性のうち、血圧が正常血圧で脂質異常症や高血糖を認めない者(非リスク保有群)と、正常高値血圧またはI度高血圧でかつ高血糖を合併する者(多重リスク保有群)を対象に調査研究を実施した。また、この調査に先駆けて、若年健常男性を対象に、動的運動に伴う動脈圧波形の変化、または負荷条件との関係について予備的検討を追加で実施した。現在、これらの調査研究で収集された資料を分析して、血管内皮機能の低下や動脈伸展性の低下を的確に捉えうる最適なプロトコールを検討中である。また、調査研究の実施に際しては、連携研究者ならびに研究協力者による協力や調査のフィールドとの連携も十分に行われ、計画に沿って円滑に遂行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の今後の計画として、平成24年度は、運動による中心動脈圧波の変化に及ぼす加齢の影響を把握したうえで、年齢を加味した暫定的な評価基準値を作成する予定である。このために、某企業の従業員で参加の協力の得られた者のなかから、高血圧、脂質異常症、糖尿病、過度の喫煙歴がないことを条件として、20歳代から50歳代までの各年代別に必要な例数の対象者を選定し、今年度の検討で確立された検査プロトコールを用いて、運動負荷試験および動脈圧波形の計測を行う。続いて、平成25年度は、動脈硬化危険因子の有無や集積の程度が波形変化にどのように反映されてくるか、あるいは、血管壁硬化度を評価する他の指標とどのような関係性があるかを、横断研究および介入研究によって明らかにし、血管内皮機能評価法としての有効性や妥当性を検証する計画である。この検討においても某企業の従業員を対象者とし、横断的研究では、高血圧、脂質異常症、高血糖の集積状況により集団を選定して運動負荷試験と動脈圧波形の記録、各種動脈硬化検査、血液・尿検査を行う。また、介入研究では、危険因子が複数以上合併した集団を用いて、歩行による軽強度の運動を週3回以上実施する運動療法を3ヶ月程度施行し、その前後で、動脈圧波形パターンと血管壁の硬化度を表す種々のパラメーターの変化を相互に比較する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、当初の研究計画に沿って調査研究を実施する予定である。現時点での計画では、調査対象予定数は80名で、述べ5~7日間でデータ解析に必要となる資料収集を行う予定である。研究費の使途としては、資料収集に必要となる消耗品類の購入、旅費・謝金等の人件費、血液・尿検査の分析委託料、装置のレンタル料などを考えている。なお、県内の複数の事業所を移動して調査を行う計画であり、それに応じた旅費の追加もしくは機材の輸送費なども想定される。さらに、国内外での研究発表に係る参加費または旅費、論文の作成および英文校正、雑誌投稿代などの費用についても研究費から支出する予定である。
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