研究概要 |
本研究では、運動が食欲・食行動に対して与える影響を脳科学的に理解し、生活習慣病や肥満者に対する新たな生活指導法の作成を目指す。 昨年度までの研究で、①ヒトの食行為の最終的段階である『食意欲』の強さが、普段の運動習慣の少なさ(Non-exercise life-style)と正相関することを見出し、本年度はこの結果を海外学術誌に論文報告した(Yoshikawa T, et al., Med Sci Monit. 2013; 19: 289-294)。さらに、②食品の画像提示とともに食意欲を湧かせた時に生じる脳神経活動を脳磁図解析(等価電流双極子法)により調べた結果、食に関する種々の感覚情報を集約する中枢とされる島皮質の神経活動が画像提示後300ミリ秒前後で観察され、その活動の強さは日常生活における各人の食意欲の強さやBody mass index(BMI)と正相関することを見出した。本年度はこの結果を海外学術誌に論文報告した(Yoshikawa T, et al., Med Sci Monit. 2013; 19: 631-640)。 さらに本年度は、食意欲を意識的に抑制させたときの脳神経活動に関して調べた。具体的には、若年成人被験者を対象に、12時間空腹条件で食品の画像提示とともに<食べよう>と念じるとき(食意欲)と<食べてはいけない>と念じるとき(食意欲抑制)の脳神経活動の違いを脳磁図(周波数解析法)で検討した。その結果、食意欲を抑制する条件では、思考・行動の認知的制御の役割を果たすとされる背外側前頭皮質(DLPFC)の有意な神経活動を、画像提示後500-600ミリ秒後にθ帯域(4-8Hz)の事象関連脱同期現象として認めた。また、運動プログラムの準備・導入をするとされる補足運動野(SMA)の活動を、200-300ミリ秒後にβ帯域(13-25Hz)の事象関連同期現象として認めた(Yoshikawa T, et al., Brain Res. 2014; 1543: 120-127)。
|