研究課題/領域番号 |
23500849
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
近藤 亨子 大阪市立大学, 医学部, 技術職員 (80420727)
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研究分担者 |
大藤 さとこ 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (70433290)
福島 若葉 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (70420734)
前田 章子 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (40250279)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 変形性股関節症 / 臼蓋形成不全 / 疫学 / リスク因子 / 機能障害 / 高齢 / 身体測定値 / 教育歴 |
研究概要 |
変形性股関節症(Hip OA)は、生活の質(Quality of life)や医療費に大きな影響を与えるため、予防対策は喫緊の課題となっている。日本人のHip OAは臼蓋形成不全に起因する二次性が大半を占める。Hip OAの疫学研究は少なく、欧米の一次性に関するものがほとんどである。本研究では、全国15病院の整形外科において初めてHip OAと診断された患者を対象に「患者評価による機能障害重篤度」、「臨床評価による重症度」と関連する因子を明らかにし、日本人におけるHip OA発症・進行のリスク因子解明の糸口とする。 今年度は、女性のHip OA患者を解析対象とし、患者評価による機能障害重篤度(支えなし歩行可能距離、歩行時ささえ使用、立ち仕事、腰かける、立ち上がり、車やバスの乗降、階段昇降)と関連する因子を明らかにした。解析は、Logistic regression modelを用いて説明変数(身体測定値、既往歴、教育歴、職業、生活習慣、生殖関連因子)のオッズ比(OR)および95%信頼限界(CI)を算出した。このうち臼蓋形成不全に起因する二次性Hip OA患者に限定した解析も行なった。 「高齢」、「重い体重」、「股関節外傷歴」、「多い出産回数」、「過去の飲酒習慣」、は、Hip OA患者の機能障害重篤度と関連を示した。「長い就学年数」は機能障害が軽いことと関連を示した。 臼蓋形成不全に起因する二次性Hip OA患者では、「高齢」、「重い体重」は、機能障害重篤度と関連を示し、「長い就学年数」、「学生時代に運動部に参加」は機能障害が軽いことと関連を示した。 本研究では、本邦で初めてのHip OA全国調査のデータを詳細に解析することによりHip OA患者の機能障害重篤度に関連する因子を明らかにした。「臨床評価による重症度」に関連する因子の検討は現在進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、全国15病院の整形外科において初めて変形性股関節症(Hip OA)と診断された患者の「患者評価による機能障害重篤度」、「臨床評価による重症度」と関連する因子を明らかにし、日本人におけるHip OA発症・進行のリスク因子解明の糸口とすることである。 平成18~20年度に実施した日本整形外科学会プロジェクト研究「日本人における臼蓋形成不全による変形性股関節症に関する疫学調査」から、股関節疾患アンケート調査(患者自記式調査票)、Hip OA病期、JOAスコアの情報を収集し、データチェック・コーディング・SASデータへの変換を行なった。 女性のHip OA患者における「患者評価による機能障害重篤度」と関連する因子を明らかにするためにLogistic regression modelのProportional odds modelを用いて、個人特性の影響を同時に考慮した多変量モデルを構築した。多変量モデル構築にあたっては、先行研究にて報告されたリスク因子、他部位(膝等)の変形性関節症の関連因子にも着目した。このうち臼蓋形成不全に起因する二次性Hip OA患者に限定した解析も行なった。女性のHip OA患者における「臨床評価による重症度」と関連する因子の検討は進行中である。 日本人女性のHip OA患者を対象とした結果「変形性股関節症患者における日常生活動作の機能障害重篤度と関連する因子」は、第70回日本公衆衛生学会総会、第22回日本疫学会学術総会にて報告した。臼蓋形成不全に起因する二次性Hip OA患者に限定した研究結果については論文作成中である。 以上、ほぼ計画どおり研究を遂行した。
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今後の研究の推進方策 |
女性の変形性股関節症(Hip OA)患者を対象として、「臨床評価による重症度」と説明変数(身体測定値、既往歴、教育歴、職業、生活習慣、生殖関連因子)との関連を検討する。このうち臼蓋形成不全に起因する二次性Hip OA患者に限定した解析も行なう。解析にあたり、臨床評価に関する収集データ(Hip OA病期、JOAスコア)をチェックし、2段階または3段階に分類する。生殖関連因子は、初潮年齢、月経の有無、閉経時年齢、閉経の種類、女性ホルモンの投与、出産の有無・回数について検討する。 男性のHip OA患者を対象として、「患者評価による機能障害重篤度(支えなし歩行可能距離、歩行時ささえ使用、立ち仕事、腰かける、立ち上がり、車やバスの乗降、階段昇降)」と「臨床評価による重症度」に関連する因子を検討する。Logistic regression modelのBinary modelとProportional odds modelを用いて、個人特性の影響を同時に考慮した多変量モデルを構築する。多変量モデル構築にあたっては、先行研究にて報告されたリスク因子、他部位(膝等)の変形性関節症関連因子に加えて、本研究の女性患者において関連が認められた因子にも着目する。 OAの症状重篤度は、患者評価と臨床評価が必ずしも一致しないため、両評価にて解析を行なうこととする。また、各評価と関連を示した因子について比較し考察する。 以上の成果について、学会発表、論文発表を行なう。
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次年度の研究費の使用計画 |
収集データ(調査票、コーディング)のチェックは、平成23年度と平成24年度に研究補助者に依頼する予定であったが、研究代表者、研究分担者、研究協力者で行なうこととした。このため申請時に経費として計上していた謝金の代わりに物品費(スキャナ、USBメモリ、トナー、出力用紙、事務用品)が必要となった。 収集データのチェック、および解析経過・結果保存のためにUSBメモリが必要であるため、80,000円を計上する。解析経過・結果は、プリントアウトをして検討し、保存するため、大量の出力用紙とトナーが必要である。また、収集データをチェックする際にもプリントアウトが必要となる。このため、出力用紙とトナー代として110,000円を計上する。プリントアウトした解析経過・結果を保存するためのファイル代として40,000円を計上する。 研究結果の一部は、第71回日本公衆衛生学会総会(開催予定地:山口)、第23回日本疫学会学術総会(開催予定地:大阪)にて発表を予定している。また、研究打ち合わせのために福岡への出張を予定している。以上の旅費として100,000円を計上する。 結果は論文として発表する予定であるため、英文校閲費として120,000円、別刷り代として50,000円を計上する。
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