研究課題
本研究では、高齢者のスポーツ活動時における突然死予防策を構築する目的で以下の実験を行った。健常な65歳以上の高齢者15名と20歳前後の男子大学生を対象として、血小板血栓形成において、分子糊として「向」血栓側へと作用するフォンビルブランド因子(VWF)とVWFを特異的に切断し、血小板血栓形成を分解する働きで「抗」血栓側へと作用する酵素(ADAMTS13)活性について、8月、10月、12月、2月の各季にそれぞれ測定し、血小板血栓形成関連因子の季節変動ならびに、それを修飾する老化の影響について検討した。VWFの季節変動についてみると、年齢層に関係なく、夏季(8月)、秋季(10月)に比べ、冬季(12月、2月)に高くなる傾向が認められ、その傾向は、気温が最も低くなる2月に顕著に認められた。同時に測定したアドレナリン、ノルアドレナリンが冬季(2月)に高くなっていることから交感神経系の働きがVWF産生の増加の一因として関与していることも考えられる。一方、ADAMTS13活性の季節変動をみると、VWFとは逆で、夏季、秋季に比べて冬季に活性が低下する傾向が見られた。この結果は、冬季に上昇するVWFを分解するため消耗性の低下を引き起こしたと推察される。これらの結果は、スポーツ活動に伴うVWF産生の増加を考え合わせた時、冬季のスポーツ活動には、より血小板血栓形成の起こりやすい状況をもたらしていることを示唆している。さらに高齢者においては、冬季のVWFが安静値レベルで高く、運動による上昇傾向が顕著であることから、十分な安全対策の必要性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
これまでに夏季(8月)、秋季(10月)、冬季(12月、2月)の実験を終了し、VWF関連因子の季節変動ならびに、それを修飾する老化の影響について、高齢者と若年成人で比較検討を始めている。春季については、次年度の5月に実施予定であり、各季節(四季)による変動について検討することができる。
今後は季節変動の中で、最もVWF産生が高かった季節、および低かった季節について、概日リズムについて詳細に検討する。また、高齢者に対して、季節変動・日内変動の結果から、VWF産生に最も個人差の見られた時期・時間を設定し検討する。さらに、体力・体格・運動習慣・栄養状態などの生活習慣等も測定・調査し、VWF産生との関連性を検討する。
季節変動を検討する上で、5月、8月、10月、12月、2月に実験を行う予定であったが、春季(5月)分について、次年度に実施することとなったため。物品費:900,000円、人件費:500,000円、その他100,000円
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