研究課題
日本人などの東洋人の糖尿病や動脈硬化症患者の多くは非肥満であるため、今後、非肥満者の病態生理学の確立が必要である。耐糖能障害における食後高血糖は動脈硬化症のリスクとして重要視されているが、非肥満者において、どのようなことが原因で高血糖が生じるのかは現在までほとんど明らかにされていない。日本人に多くみられる非肥満の耐糖能障害などをデータベース解析により分類し、新たなタイプ分けを試みることを目的とした。 検診センターにおいて1994年から2003年までに75g経口糖負荷試験を受けた者1123名。データベースを用いて、空腹時血糖値の結果から、NGT, IFG、DM型に分類し、さらに非肥満で正常(BMI; 23kg/m2未満)、正常高値(BMI; 25kg/m2未満)、肥満(BMI; 25kg/m2 以上)の3群に分ける。それぞれの群における特徴について比較した。 耐糖能については、NGT、IFG、DM同士で比較すれば、BMIによらずほぼ同等の血糖曲線を描いた。しかしながら、インスリン値についてはBMIの増加に伴い、インスリンの過剰分泌が観察された。さらに非肥満者において、インスリンの分泌が多い群と少ない群に分けて比較すると、多い群では脂肪肝を有する率が高い傾向、高中性脂肪、低HDL血症を認めた。これらのことから、非肥満者において異所性脂肪蓄積がインスリン抵抗性を惹起し、インスリン分泌が過剰となる可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、データベース解析を主とした研究を目的として、概ね達成したと考える。
来年度は、当初の予定通り、ダブルトレーサーを用いた検討を主として取り組む。 方法としては、以下の通りとするが、ダブルトレーサー法を国内で実施するのは初めてであるため、予備的に2型糖尿病患者など、大きな差が出やすい症例も被験者としてリクルートして、解析を行うこととする。
次年度は、クランプ試験やダブルトレーサー試験における解析費用、安定同位体購入費、質問用紙購入、採血検体費に充ていく。 具体的には、同意が得られた被験者に対して、一次スクリーニングとして経口糖負荷試験を行い、条件を満たす症例を登録する。その後、以下に挙げるパラメーターについてデータを収集する。身体活動量はライフコーダー及び質問紙(IPAQ)、食事内容(DHQ)・睡眠(ピッツバーグ睡眠テスト)は質問紙により検討する。検査前日21時から絶食とし以下の検査を行う。体脂肪量の測定、1H-MRS法による前脛骨筋・ヒラメ筋・肝臓における細胞内脂質の定量、MRIによる腹腔内脂肪・皮下脂肪量の定量を行う。FMD法により血管内皮機能を計測する。その後、安定同位体[6,6-2H2]glucoseを用いた2ステップ高インスリン正常血糖クランプ検査(インスリン注入速度10mU/m2/min、20mU/m2/min)により、肝臓、骨格筋のインスリン抵抗性を判定する。 別日に、ダブルトレーサー法による糖負荷後の糖の動態を測定する。静脈投与用として、[6,6-2H2]-glucoseを用い、経口投与用として[13C6]-glucoseを用いる。2時間の[6,6-2H2]-glucoseの静脈投与後に、1%の[13C6]-glucoseを含むブドウ糖75gを経口摂取させ、その後30分おきに採血をして血清分離する。得られた検体についてGC-MSを用いてそれぞれの安定同位体の血中濃度を測定し、各代謝パラメーターを算出する。
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Journal of Diabetes Investigation
巻: 2 ページ: 310-317
10.1111/j.2040-1124.2010.00091.x
巻: 2 ページ: 356-358
10.1111/j.2040-1124.2011.00108.x