研究課題
男性394名(53.9 ± 7.9歳)を解析の対象として、Mt5178C/A多型における喫煙習慣と脂質異常症リスクとの関係について検討した。喫煙習慣については、吸わないまたは以前吸っていた、1日1~20本、1日21本以上の3群に分けた。交絡要因を調整したところ、Mt5178C型においては喫煙本数が多いほど血清HDLコレステロール濃度は低下し、低HDLコレステロール血症リスクの上昇が認められた。Mt5178A型においては喫煙本数が多いほど血清トリグリセリド濃度および高トリグリセリド血症リスクの上昇が認められ、高LDLコレステロール血症リスクの上昇も認められた。次にMt5178C/A多型における緑茶飲用と高血圧症との関係について検討した。緑茶飲用について1日1杯以下、2-5杯、6杯以上の3群に分けた。交絡要因を調整したところ、Mt5178C型において緑茶飲用の杯数が多いほど高血圧症リスクの低下が認められた。対象を50歳以上として解析したところ、Mt5178C型において緑茶飲用が1日6杯以上の人は1杯以下の人に比較して高血圧症リスクの有意な低下を認めた。Mt5178A型においては緑茶飲用と高血圧症リスクとの関連は認められなかった。さらにMt5178 C/A多型と飲酒習慣との推算糸球体濾過量(eGFR)への影響について検討した。飲酒習慣については、全く飲まない、ときどき飲む、毎日飲むの3群に分けた。eGFR < 90ml/min/1.73m2を腎機能低下とした。Mt5178A型においては飲酒頻度が増えるほどeGFRは上昇し、腎機能低下のリスクは低下した。毎日飲酒するMt5178A型は全く飲まないMt5178A型に比較して腎機能低下のリスクの低下を認めた。Mt5178C型においては飲酒習慣と腎機能低下リスクとの関連は認められなかった。
3: やや遅れている
研究の実績にも記載したように、データマイニングによるMt5178C/A多型と生活習慣との種々の交互作用については、順調に研究は進捗している。しかし、行動変容を企図する遺伝的リスク値に関する研究については、未だにアンケートを実施しておらず、研究全体における現在までの達成度はやや遅れていると言わざるを得ない。
データマイニングによるMt5178C/A多型と生活習慣との種々の交互作用については、最終年度も研究を継続する。現時点では、①Mt5178C/A多型と喫煙習慣・飲酒習慣とのnon-HDLコレステロール濃度への影響、②Mt5178C/A多型と緑茶飲用との推算糸球体濾過量への影響、について論文を投稿中であり、③Mt5178C/A多型と飲酒習慣・コーヒー飲用との心血管リスクの重積への影響、について論文を作成中である。また、行動変容を企図する遺伝的リスク値に関するアンケートについては、最終年度中に実施する予定である。
論文作成に係わる諸経費(英文校正料、掲載料、別刷り代など)およびアンケート調査に係わる諸経費(郵送代(切手)、封筒、アンケート印刷、データ入力代)で全額を使用する予定である。
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